社労士

就労調整のツボ

2024.12月new!
壁を超えたら何が起こる?
12月に入り、経営者や経理担当者がパートタイマーorアルバイト従業員から、今話題の“年収の壁”について「壁を超えたくないので就労調整したい」などの相談を受ける機会があるかもしれません。
が、さて、そもそも壁(その年収を超えたらパート・バイト本人orその家族に大ダメージが発生すると言われているライン)は本当に存在するのでしょうか?
結論から言うと、壁はレアケースでしか発生しません。けれども、就労調整する必要の無い従業員までもが「複雑でよくわからないから、とりあえず壁(103万円など)までにしておこう」くらいの感じで就労調整しているというパターンが散見されるようです。
繁忙期の12月、年末にかけて、従業員から壁について相談を受けた時、正しい知識があればシフト調整に悩まされずに済むかもしれません。
それでは、あるある相談ごとに内容を見てみましょう。
「103万円の壁を超えたくない」と言われたら
本当に103万円の壁がある人とは・・・
・配偶者(夫など)の勤務先から103万円基準で配偶者(扶養・家族)手当が出ているパート従業員等
親に扶養されている学生アルバイト等
であり、レアケースと思われます。
よって、このフレーズを言われたら、まずは「あなたの配偶者の勤務先から手当が出ているか?」や「あなたは親の年末調整等の扶養に入っているか?」を確認し、該当しない場合には就労調整しても意味が無いことを説明し納得してもらえれば、シフト調整しなくて済む、という状況になります。
詳細はこちらをどうぞ。

「106万円の壁を超えたくない」と言われたら
これはそもそも社保加入者が51人以上の会社等の話です。社保加入者が50人以下の会社等の従業員には、106万円の壁自体、存在しません。
さらに、社保加入者が51人以上の会社等の場合であっても、106万円を超えないかは残業代は含まず当初の契約内容から計算するため、このフレーズが出る場面は今のタイミングではなく雇用契約締結時(就職した時など)のはずです。
つまり、今から就労調整しようがしまいが、従業員本人の社保加入判定には影響しないので、調整は不要(というか無意味)と言えます。
「130万円の壁を超えたくない」と言われたら
いわゆる“社保の扶養”に入ることができる給与年収は130万円とされています。ですが、おそらく先月あたり協会けんぽから会社等へ届いている「被扶養者資格再確認」の書類に案内があったと思われますが、一時的な収入増であれば扶養継続可能とするなど、130万円のラインはアバウトで流動的です。
「今年の給与を何が何でも130万円以内にしなければ、即、社保の扶養をはずれる」というようなものではありません。
詳細はこちらをどうぞ。

シフト調整する前に
現在、従業員から求められシフト調整に悩まされているとしたら、それは時間と労力のムダかもしれません。
パート・バイト従業員&その家族の個々の事情の確認は必要ですが(もしかしたらレアケースに該当し、本当に就労調整すべきかもしれないため)、昔々のイメージだけの103万円ラインなどに従業員ともども巻き込まれないように、一度、落ち着いて検討してみることをお勧めします。
個々のケースについて不安な時は、社労士等に相談するとよいでしょう。

フリーランスの労災保険

2024.11月
全業種フリーランスが令和6年11月から労災保険特別加入可へ
フリーランスも皆、労災保険に入れるようになった
という記事等を目にしたことがあるかもしれません。
厚生労働省のホームページにも制度を紹介するパンフレット等が掲載されており、確かに令和6年11月1日から、いわゆるフリーランス新法におけるフリーランスは、本人が申請し労災保険へ特別加入できるようになったと案内されています。ただし加入するかはあくまでも任意です(義務ではない)。
労災保険とは
労災保険とは、労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や亡くなった場合に、被災労働者や遺族を保護するための給付等を行う保険です。
労働者を雇う会社等は原則、強制加入で、保険料は会社等の全額負担です。
労働者が受けられる給付等の具体例としては、業務中の事故や過労死などが起こってしまった時の治療費ゼロ、休業中の給与補償、障害が残った場合の補償、死亡補償などです。
つまりもともとは、いわゆるサラリーマン(パート・バイト・派遣含)を対象に、私傷病(プライベートな生活中の病気やケガ)ではない、仕事をしているからこそ起こった非常事態を想定して、サラリーマン本人ではなく会社等が備えるものでした。
では、特別加入とは一体どのような制度でしょうか?
労災保険の特別加入とは
特別加入制度自体は、以前からありました。
ただし、事故のリスクが高い一部の業種限定でした。
その内容は、たとえば、一人親方(大工等)や中小事業主(中小規模の会社or個人事業において従業員同様に労働する事業主等)などが、定められた団体を通じて加入すれば、労働者ではないのだがイザという時には労働者同様の補償を受けられるというものでした。
保険料は、特別加入する事業主本人が、自分の日給的な金額を決め、それをもとに計算し支払うこととされています。
ウーバーイーツ配達員は自転車でもすでに対象だった
特別加入できる人(業種)の範囲は、これまでも徐々に拡大されており、個人貨物運送業者(ウーバー等の自転車配達員等)、芸能・アニメ関係者、ITフリーランス等は、令和3年にはすでに特別加入できることとなっていました。
そして今回、業種にかかわらず、フリーランスが希望すれば特別加入ができることとなりました。
ただし加入手続&保険料支払は本人が行わなければなりません。一定の時間と労力を要し、費用負担が発生します。
特別加入すべきかはケースバイケース
これまでは対象業種ではないために特別加入できなかったフリーランスの方は「自分は特別加入すべきか否か?」悩み中かもしれません。
ここで、そもそも労災事故がほぼ想定されないのであれば、または民間の就業不能保険や所得補償保険、生命保険、損害保険等で何らかの手当ができているのであれば、特別加入の必要はあまりないかもしれません。
労災保険は政府管掌の手厚い給付等が受けられる保険で、保険料も高額ではありませんが、現在の自分の状況(自分が仕事中にもしもの事があった時、誰がどのくらい金銭的に困窮するかなど)を考慮して、加入するかを決めるのがよいと思われます。
一人で考えてもどうすればよいか分からない時は、社労士等へ相談するとよいでしょう。

フリーランス新法2024年11月1日施行

2024.10月
フリーランスへ業務委託するときの新ルール
業種・業界を問わず、また発注者の規模にかかわらず、事業者がフリーランスへ業務委託するとき守るべきルールを定めたフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が来月1日から施行されます。
フリーランス新法は、これまで労働基準法等の労働関係法令で保護されなかったフリーランスを保護する法律です。施行日以後、発注者である事業者側には、フリーランスへの業務委託の際に、いくつかの義務が課されます。よって、該当する取引が想定される場合には準備が必要です。
なお、実効性を高めるため、罰則規定も設けられています(命令違反や検査拒否などには50万円以下の罰金等)。

フリーランスとは
まず、この法律におけるフリーランスとは、従業員を雇用しておらず、一人で収入を得るために委託者(発注側の事業者)との間で請負契約や業務委託契約を締結して仕事を受注している者(個人事業者or一人社長)と定義されています。

業務委託パターンごとに義務の数がちがう
事業者(発注者)とフリーランス(受注者)との力関係のバランスや、契約期間の長短により、課される義務の数が異なります。
フリーランスへの業務委託をする全ての発注者に課される義務は1つだけで、「取引条件の明示義務」です。これだけは、フリーランス同士の取引であっても発注者に課されます。
発注者が従業員を雇用している事業者、すなわちフリーランス以外の場合には、上記に加え、さらに3つの義務が課されます。「期日における報酬支払義務(60日以内の支払)」「募集情報の的確表示義務(虚偽表示禁止等)」「ハラスメント対策に係る体制整備義務(セクハラ・マタハラ・パワハラ対応)」です。
そしてこの場合に、契約期間が1ヶ月以上であれば「発注事業者の禁止行為(買いたたき等7つ)」が定められており、契約期間6ヶ月以上になると「育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(申出への対応)」「中途解除等の事前予告・理由開示義務(30日前予告等)」も加わります。

取引条件の明示義務
それでは、フリーランスと取引する全ての事業者の義務「取引条件の明示義務」を果たすには、具体的に何をどうすればよいのでしょうか?
取引条件の明示とは、取引条件のうち一定の事項(明示すべき事項)について、口約束ではダメで、書面orメール、SNSのメッセージ、チャットツール等で文字化することとされています。
明示すべき事項は以下のとおりです。
①発注事業者とフリーランス、それぞれの名称
②発注事業者とフリーランスとの間で業務委託をすることを合意した日
③フリーランスにお願いする業務の内容
④いつまでに納品するのか(納品期日)、いつ作業をするのか
⑤どこに納品するのか、どこで作業をするのか(場所
報酬はいくらか、支払日はいつか
また、ケースにより追加で必要となる事項もあります(現金以外の方法で支払う場合は支払方法等)。
なお、交付するのは「契約書」でなくても大丈夫です。たとえば「発注書」であっても、取引内容に応じて適切な明示事項が記載されていれば問題ありません。様式も自由です。

パンフレットやQ&A
フリーランス新法について、様々な情報がネット上にも見られますが、正確な詳細を知りたい時は、厚生労働省等のパンフレット「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法」や厚生労働省のQ&A「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律Q&A」が有益と思われます。
パンフレットには、たとえば「期日における報酬支払義務(60日以内の支払)」の日数カウントのしかたや、「発注事業者の禁止行為(買いたたき等7つ)」の法違反となる具体例なども、カレンダーやわかりやすいイラスト付きで記載されています。
それでもなお自分の場合どうするべきかわからない、という時は、社労士等へ相談するとよいでしょう。

最低賃金R6.10月改正

2024.9月
改正後の愛媛県最低賃金は1時間956円
最低賃金とは、国の定める賃金(給与)の最低ラインで、単位は時給
で考えます。原則、都道府県ごとに定められ、毎年7月頃に発表され、その年の10月から新しい基準が適用されます。現在(~令和6年10月12日)の愛媛県の最低賃金は897円ですが、令和6年10月13日からは改正により59円アップの956円となります。

今回のアップは、引上げ額(59円)・引上げ率(6.58%)ともに過去最高です。そして引上げ額(59円)は全国で2番目の大幅アップとなりました(全国トップは徳島県の84円増)。

正社員、パート、アルバイト等にかかわらず、また労使の合意があったとしても、このライン以上の賃金を支払っていない会社等は最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金が科されることがあります。

では、そのチェックは具体的にはどうすればよいのでしょうか?


チェックは時給に直して比較

パート、アルバイト等で時給制なら、そのまま比較すれば時給が安すぎないかチェックできます。日給であれば、その額を1日の所定労働時間(その従業員がその会社等で1日何時間働くことになっているか)で割って時給に換算すればわかります。

では、月給の場合はどうすればよいのでしょうか?月給を時給に換算する・・・わかるようなわからないような感じかもしれません。

月給の場合は、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。
決められたものとは?そして月平均所定労働時間とは、具体的に何のことなのでしょうか。


月給のうち合計するものは・・

給与明細内訳として、基本給以外にもいろいろな手当が用意されていることがあります。すべて給与ではあるのですが、最低賃金と比較する時には、毎月支払われる基本的な賃金だけが対象となります。具体的には“合計しないもの”が決められているので注意が必要です。

合計しないもの・・・臨時的な賃金(報奨金・結婚手当等)、残業手当等、皆勤手当、通勤手当、家族手当、毎月支払でない賃金(賞与等)
よって、合計するものは何か?と言えば、基本給と、たとえば職務手当、住宅手当等となります。
月平均所定労働時間とは

会社等で決められた“年に何日働くか”が「年所定労働日数」です。そして同じくその会社等で決められた“1日に何時間働くか”が「所定労働時間」です。よって、(年所定労働日数×所定労働時間)÷12で『月平均所定労働時間』が算出できます。

「所定労働時間」は会社等で決められた時間であり、個人との間で交わした雇用契約書(or労働条件通知書等)や就業規則に定めがあると思われます。「年所定労働日数」は会社等のカレンダーどおりでカウントします(365日から会社等の休日を引くなど)。


事例Q&A

Q:月給22万円(内訳:基本給15万円、通勤手当1万円、皆勤手当1万円、住宅手当1万円、残業手当4万円)。年所定労働日数244日、所定労働時間7.5時間の場合、最低賃金法(改正後)は大丈夫でしょうか?

A:問題ありません。
まず、月給のうち合計するのは基本給と住宅手当なので15万円+1万円=16万円・・①
月平均所定労働時間は(244日×7.5時間)÷12=152.5時間・・②
①/②=1,049円>956円なので、勤務地が愛媛県であれば最低賃金を下回っておらず適法という判定になります。
仮に勤務地が東京であれば、東京の最低賃金(改正後)は1,163円なので、問題があります(安すぎます)。
知らないうちに法違反となっていることも

最低賃金額は毎年改正され少額ずつですがアップしているため「経営者が日々事業に忙殺されていたら知らないうちに法違反となっていた・・」という事例もあるようです。

厚生労働省の公表している2023年度データからも、従業員30人未満の中小事業者における影響率(最低賃金を引上げた場合に、現在の時給がそれを下回ることになる労働者の割合)は愛媛県17.3%(全国平均21.6%)と、最低賃金に近い水準の時給も一定割合あることが読み取れます。

指摘されて発覚し、後日無駄な時間と労力、金銭を費やすなどという事態にならないように、この機会に給与額のチェックを行っておくことが望ましいと思われます。
自社等でチェックが困難な場合等は、社労士へ相談するとよいでしょう。

マイナ保険証

2024.8月
「資格情報のお知らせと加入者情報」が届く
協会けんぽから案内がされているかもしれませんが、令和6年9月(来月)、健康保険の適用事業所(会社等) へ「資格情報のお知らせ及び加入者情報」が封筒or箱で郵送されます。
中味は、マイナ保険証絡みの書面が入った、従業員等宛ての封筒です(個人別)。
会社等は、宛名を確認し、該当する従業員等へ本人分(あればプラス被扶養者分)を配付しなければなりません。


何が書いてあるのか?
封筒の中の書面には、本人が加入している健康保険の情報(保険者番号、記号・番号など)を保険証サイズにまとめた「資格情報のお知らせ」と、協会けんぽに登録されているマイナンバー下4桁が記載されています。
受取った従業員等は各自、マイナンバーに誤りがないか確認し、「資格情報のお知らせ」は切り取って保管するようにと案内されています。


何に使うか質問されたら
従業員等から「これ(資格情報のお知らせ)は一体何に使うのか?」と質問されることがあるかもしれません。その答えは・・・?
以下のとおり、個人の状況により異なります。
マイナ保険証ありの人
マイナンバーカード(マイナンバーが記載された顔写真付きのカード、マイナカードとも言う)を取得していて、さらにそれを健康保険証(マイナ保険証)として使うための登録をしている人であれば、たとえば通院している医療機関に読み取り機器があり、受付でそれにカードを置いて顔認証でサクッと済んでいるなら、その医療機関についてはとりあえず不要と言えるでしょう。

「資格情報のお知らせ」を使うとすれば、マイナ保険証に対応していない(読み取り機器・システムを導入していない)医療機関等(病院や薬局など)での受付や、システムがあっても何らかのトラブル(システムorマイナカードの不具合)でマイナンバーカードが読み取れない場合に、保険証の情報を証明するために提示するという場面が想定されます。
このような場合、いったん自費で全額払いなどという事態になると面倒なので、もしもの場合に備えてマイナンバーカードと一緒に携帯しておくのがよいと思われます。
従来の健康保険証の人
マイナンバーカードの取得やマイナ保険証の登録は義務ではありません。

よって、マイナンバーカードは取得しているがマイナ保険証の登録はしていない人や、そもそもマイナンバーカードを取得していない人もおり、これらの人は、従来の健康保険証を使用継続しています。その場合は、今回配付される「資格情報のお知らせ」はとりあえず不要です。
健康保険証の方が情報量が多く、単独で使えるからです。

ただし状況が変われば(たとえばマイナ保険証へ移行したくなったら)必要となるかもしれません。
携帯する必要はありませんが、保管はしておくのが安全かと思われます。

健康保険証の廃止!?
巷では“令和6年12月2日から保険証が発行されなくなる”という情報があちこちで見られるようになりましたが、実際のところ何がどうなるのでしょうか?
結論だけ言うと、従来の(現在使っている)健康保険証については、最長令和7年12月1日までは使用できます。その後は、マイナ保険証の無い人には、従来の健康保険証に代わるものとして「資格確認書」が申請不要で交付されることとなっています。
会社等の入退社手続きはどうなる?
令和6年12月2日からは会社等での健康保険証の発行作業はなくなります。
けれども入社時の被保険者資格取得届や退職時の喪失届、被扶養者の異動届等の手続きは、引き続き必要です。
また、上記のとおり、マイナ保険証のある人と無い人が混在する状況が続くことも想定されます。
そのため入社時には本人や被扶養者についてマイナ保険証の有無を確認し、無い人については「資格確認書」の交付希望欄(届出書に欄が追加される予定)へ必要な記載をして交付を受けることとなるようです。

算定基礎届と年度更新のツボ

2024.7月
提出期限はどちらも7月10日
会社等が年に1回必ず行わなければならない届出、算定基礎届(社会保険)年度更新(労働保険)
提出期限は目前に迫っていますが、問題なく作成完了できたでしょうか?
それぞれ、作成のための案内(ガイドブック・書き方など)も郵送されているはずなので、それに従って作業を進めれば大丈夫と思われますが、全部読むのも結構大変です。
レアケースに遭遇したらガイドブックor問合せして確認するのがベストですが、一般的なケースであれば、ツボを知っておくだけで少し安心かもしれません。
ツボは、この2つの届出の、似ているようで微妙に違う部分かと思われます。
算定基礎のツボ
①報酬に含めるもの・含めないもの
 含めるもの・・通勤手当や現物の定期券(定期は1ヶ月あたりの額を算出し含める)
 含めないもの・・賞与(年3回までの賞与)
②集計は支払ベース
 4~6月に「支払われた」金額を記載
 (会社等の締日・支払日によって、労働月との対応はズレる場合もある)
③支払基礎日数のカウント
 これは労働した期間を考えてカウントする
 月給・週給の従業員は暦日(土日等も含める)、時給・日給の従業員は実勤日数
年度更新のツボ
①賃金に含めるもの・含めないもの
 含めるもの・・通勤手当や現物の定期券、賞与
 含めないもの・・役員報酬(役員は労働者ではないため年度更新の対象外)
②集計は発生ベース
 令和5年4月~令和6年3月に確定した賃金(給与・賞与)を記載
 支払ベース(いつ支払われたか)でなく、発生ベース(労働月に賃金計上)
 よって算定基礎とは月がズレる場合がある
③概算保険料の考え方
 「今後の見込額」とあるが、通常は今回の確定額(実績)をそのまま記載
(見込額が実績と倍半分違う(次年度に賃金が倍増するor半減する予定)時だけその「見込額」を記載しそれにより概算保険料を計算する)
厚労省の年更計算支援ツール
「年度更新申告書計算支援ツール」で検索すると、厚生労働省ホームページの主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)が見つかり、支援ツールを使って申告書がある程度自動で作成されます。
ただしもともと保険料計算自体は複雑ではないので、補助的に検算程度で使う感じかもしれません。

試用期間

2024.6月
試用期間とは
試用期間(試みの使用期間)とは、使用者(会社等)が労働者を本採用する前に、労働者の適性を評価・判断するために会社等が設ける期間のことです。
試用期間の長さについては、法律上特に規制はありません。
一般には3ヶ月程度の期間が設定されることが多いようです。


試用期間中の給与
試用期間中の給与を本採用後より低く設定することは、最低賃金を下回らない金額であり、労働条件通知書等で労働者に明示していれば、法(最低賃金法・労働基準法)違反とはなりません。
なお、残業させた場合は当然に、法定の残業代の支給が必要です。


労働保険(雇用・労災)の取扱い
“試用期間だから労働保険(雇用・労災)に加入しなくてよいか?”というと、そのようなことはなく、働き始めた日から加入する義務があります。
つまり、いわゆる正社員を新たに採用する時、試用期間を設けても設けなくても、労働保険の取扱い(加入のタイミング)は同じということです。
会社等が加入の届出をしない場合等には、ペナルティ(6ヶ月以下の懲役or30万円以下の罰金)があります。


社会保険(健康保険・厚生年金)の取扱い
“試用期間だから社会保険(健保・厚年)に加入しなくてよいか?”というと、そのようなことはなく、働き始めた日から加入する義務があります。
つまり、いわゆる正社員を新たに採用する時、試用期間を設けても設けなくても、社会保険の取扱い(加入のタイミング)は同じということです。
会社等が正当な理由なく加入の届出をしない場合等には、ペナルティ(6ヶ月以下の懲役or50万円以下の罰金)があります。


試用期間を設けるメリット
給与は少なめでよいかもしれないが、労働保険・社会保険には当初から加入するなら、試用期間はあってもなくてもあまり変わらないのでしょうか?
そんなことはありません。
試用期間を設ける趣旨は、労働者の適性を判断する時間的余裕を作り、本採用後にミスマッチが判明するリスクを軽減することです。
問題無く本採用へ移行できれば良いですが、中には、実際に働き始めると何かしら継続雇用は難しいと判断せざるをえない問題が発覚する場合も想定されます。問題とは、例えば重大な経歴詐称、勤怠や勤務態度の不良などが挙げられます。
そのような困った事態となった時、試用期間内かつ入社から14日以内であれば、会社等は即時解雇(本採用拒否)をすることができる、とされています。
14日で見抜けるか?という問題はありますが、本採用拒否は解雇であるにもかかわらず、通常なら求められる解雇予告等(解雇予告手当・30日分の賃金支払)は不要で、継続雇用を止めることができます。


就業規則は必須
試用期間は法律によって義務付けられているものではなく、設けるかは会社等の任意です。
よって、試用期間を設けるのであれば、その日数や短縮・延長の有無などの具体的内容について、就業規則に定める必要があります。
試用期間について想定される様々な事態に対応し、かつ労務トラブルを防止するために、就業規則の内容はできるだけ詳細に定めておくと安心です。
「試用期間、設けてみようかな。でも就業規則の記載内容ってこれで大丈夫だろうか・・?」と心配な時は、社労士へ相談すると良いでしょう。

2024年10月から社会保険適用拡大

2024.5月
従業員51人以上の会社等が新たに対象に
2024年5月現在、従業員101人以上の会社等で働くパート・アルバイト(短時間労働者)のうち一定要件を満たす従業員は、社会保険(健康保険・厚生年金)加入がすでに義務付けられています。
2024年10月からは、さらに従業員51人以上(100人以下)の会社等についても、同様の社会保険適用が義務付けられます。
①週所定労働時間20時間以上②所定内賃金8.8万円以上③2ヶ月以上雇用見込④学生でない、という4要件を満たす従業員は、原則、本人の意思にかかわらず社会保険に加入しなければなりません。
いわゆる106万円の壁と言われているものが関係する会社等が増えるということです。


従業員51人以上とは?
ところで、この51人以上とは、どのようにカウントするのでしょうか?
パンフレット等には“従業員数”と書かれていることが多く、パッと見は、会社等で働く人を全員カウントするのか?と思ってしまいますが、そうではありません。
答えは・・・
社会保険(健保・厚生)加入のもともとの要件にあてはまる人、すなわちフルタイム従業員(いわゆる正社員等)及びほぼそれに近い形で働く従業員(週所定労働時間・月所定労働日数が正社員の3/4以上等)だけをカウントします。
厚生労働省のお知らせには“被保険者数”と書かれており、この表現がわかりやすいかもしれません。
実務上は通知あり
実務では、今回の改正により新たに特定適用事業所に該当するであろう従業員数51人~100人の会社等に対して、「特定適用事業所該当通知書」or「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が届くこととなっています。
特定適用事業所に該当し、新たに社会保険加入する従業員がいる場合には、対象者の「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
従業員への周知と面談
2024年10月から特定適用事業所に該当することとなり、新たな加入対象者(4要件を満たすパート・アルバイト)がいるのであれば、この制度の内容を全従業員へ周知し、加入対象者とは面談の機会を設けるべきと思われます。
全従業員へ周知するのは、従業員間のトラブル防止のためです。
また、対象者との面談は、仮に「どうしても社会保険に加入したくない」という意向があれば契約内容の変更(所定労働時間の短縮等)などを検討せざるをえない場面も想定されるためです。
個別対応で困ったら相談を
新たな加入対象者との面談で、従業員から、社会保険加入のいわゆるメリット・デメリット等についての質問を受ける事もあるかもしれません。
その返答は、従業員の状況ごとにちがうものになることも考えられます。
個別対応に悩んだ時は、社労士へ相談するとよいでしょう。

在職老齢年金|令和6年度の支給停止調整額は50万円

2024.4月
毎年見直される在職中の老齢厚生年金の支給停止ライン
会社の役員や従業員などが一定年齢に達すると、在職(厚生年金に加入等)しつつ年金を受給する権利が発生します。しかし受給の際に、給与と厚生年金の合計額が多額になると、厚生年金が減額されることがあります。
そのラインは令和5年度は48万円でしたが、令和6年度は50万円へ改定されています。



年金支給停止ラインの判定式
ところで、給与と厚生年金の合計額とは、実際にはどのように計算されるのでしょうか。
会社等は年金事務所へ「算定基礎届」や「報酬月額変更届」、「賞与支払届」等を提出しています。その届出に基づき自動的に計算される“標準報酬月額”や“標準賞与額”が判定に使われます。
具体的には、その月現在の
①標準報酬月額(Max65万円)
②前1年間の標準賞与額(Max150万円/月)の合計×1/12
③老齢厚生年金の月額
の合計が『給与と厚生年金の合計額』とされ、①+②+③が50万円を超えると年金が減額されます。



どのくらい減額されるか
上記①+②+③>50万円の場合、50万円をオーバーした金額の1/2だけ年金が減額されます。
減額される金額(支給停止額)は毎月変動する可能性があります。
理由は、①の標準報酬月額は随時改定される可能性があるため、また②は毎月1ヶ月ずつ集計期間がずれるため金額が変動する可能性があるからです。
支給停止額は年金事務所で自動的に調整され、会社や本人(役員・従業員)の手続は不要です。
なお、減額された年金はその後支給されることはありません。

定年後の継続雇用者等への対応
定年後も続けて働く従業員がいる場合、在職老齢年金のしくみを知っていれば、年金を満額受給しながら、無理のない範囲で働き相応の給与を受け取ってもらうという事も可能かもしれません。
また、役員が該当することとなった場合にも、給与額の設定時に正しい知識をもとに在職老齢年金を考慮することで、想定外の事態になることを避けられるかもしれません。
年金減額されないことがすべてではありませんが「こんなはずではなかった・・」などのトラブル防止のためにも、該当する従業員がいれば適切な案内をしてあげると喜ばれるのではないでしょうか。
より詳細な説明を求められたり個別質問などがあれば、社労士や年金事務所等へ相談するとよいでしょう。

令和6年度社会保険料率の変更

2024.3月
令和6年3月分(4月納付分)から変更
会社等へ協会けんぽ愛媛支部からパンフレットなどで案内が届いていると思われますが、令和6年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が変更されます。


天引きする社会保険料合計は年齢により微増or微減
いわゆる「健保厚生」の「厚生」年金保険料率はすでに18.3%/2=9.15%でMaxに固定。
今回「健保」の健康保険料率が引き上げられ、40才未満の人は10.01%/2=5.005%→10.03%/2=5.015%と社保徴収額は微増(+0.01%)、40才以上の人は介護保険料率は引き下げられたため(10.01%+1.82%)/2=5.915%→(10.03%+1.60%)/2=5.815%と社保徴収額は微減(△0.1%)となります。


「3月分(4月納付分)から」とは正しくはいつから?
保険料率の変更はこれまでにも何回もありましたが、給与計算をするにあたり料率を変更するタイミングに悩んだことはありませんか?
今回であれば、「3月分(4月納付分)から」って3月支給の給与なのかor4月支給の給与なのか、よくわからない・・と思っていないでしょうか。


健康保険法・厚生年金保険法どおりなら4月中に支給する給与から変更
健康保険法第167条・厚生年金保険法第84条には、給与から控除できる保険料は前月分である旨規定されています。給与計算ソフトの設定で言うと『翌月徴収』などのメニューを選択している場合で、これが法律上のあるべき源泉徴収方法です。
その場合、今回の変更は4月中(4/1~4/30)に支給日がある給与から適用となります。いつ勤務した分の給与か(対応労務期間)は関係なく、いつ支給された給与か(支給ベース)で考えます。

締日、支給日、支給サイトなどは会社によりさまざまで、同じ会社であっても勤務形態によって異なることもあり、考えれば考えるほどわからなくなるかもしれませんが、どのような場合であっても上記のとおり考えればOKです。


当月徴収していたら
給与計算ソフトの設定で言うと『当月徴収』メニューを選択している場合、原則の方法ではありませんが、実務上はよく見かける方法です。
もし会社等が「当月分社保料を給与から控除している」のであれば、今回の変更は今月(令和6年3月)中(3/1~3/31)に支給日がある給与から適用となります。


賞与は3月1日以降が料率変更
賞与についてはスッキリしていて、パンフレットにも明示されているとおり、3月に支払う賞与から変更対象となります。

労働条件通知書の記載事項の改正

2024.3月
労働条件通知書とは
労働条件通知書
とは、給与や労働時間等の労働条件を記載した書面のことです。
会社等が労働者を雇入れた際には「労働条件通知書(or雇用契約書等)」を労働者に交付する義務があります。
労働契約締結にあたり労働条件を明示することで、労働者は自分の労働条件を知ることができ、安心して働くことができます。トラブル防止の観点からも、労働条件の明示(労働条件通知書等の交付)は契約締結時つまり働き始める前に、原則書面で交付することとされています。(メール・SNS等での明示は、労働者が希望した場合のみOK)

交付の対象は、正社員・パート・アルバイト・有期雇用を問わず、その会社等で働く全ての労働者です。
会社等が交付義務を果たさなかった場合は、ペナルティ(30万円以下の罰金)があります。

絶対的明示事項(必須の記載事項)
 全ての労働者に対する必須の記載事項は次の6つです。
①労働契約の期間
②有期雇用契約の更新基準
③就業場所及び従事すべき業務
④始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日・休暇・シフト制に関する事項
賃金に関する事項
退職に関する事項

なお、有期雇用や短時間労働者に対しては、以下の事項も記載が必要です。
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
2024年(令和6年)4月からの改正事項
来月、2024年(令和6年)4月1日以降の労働契約締結(入社や更新等)に際しては、法令改正により、労働条件明示事項が追加されます。

全ての労働者
に対しては、絶対的明示事項③について、雇入れ直後の就業場所と従事すべき業務のみならず、将来、配置転換などにより変わりうる就業場所と従事すべき業務の変更の範囲を記載することとなりました。
将来は不明な場合であっても、記載無しは配置転換無しであるとの誤解を避けるため、たとえば場所の変更の範囲:会社の定める営業所、業務の変更の範囲:会社の定めるすべての業務、などと記載しておくのがよいかもしれません。

有期雇用の労働者
に対しては、
・更新上限の有無及び内容
・無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申込むことができる旨
・無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件
を追加記載することが必要となります。

ちなみに無期転換とは、有期労働契約が通算5年超となる場合、労働者が申込みをすれば無期労働契約へ転換できるというルールです。転換後の労働条件は、契約期間が無期になる以外は原則、従前と同一とされています。

法改正の背景
昨今は、多様な正社員(勤務地限定正社員や職務限定正社員)など、さまざまな新しい働き方が生まれており、そのような労働者全般について雇用ルールを明確化すべく、記載事項の追加変更がされました。

また、有期雇用労働者においては単に無期転換申込権を行使できることを知らず有期契約を繰り返している現状を踏まえ、労働者の理解を促進するため、記載事項の追加がされました。

求人票にも記載事項追加が必要
今回の労働基準法改正は職業安定法にも影響し、求職者等に対し
・就業場所及び業務の変更の範囲
・有期労働契約の更新上限
が、明示すべき労働条件に追加されました。

求人広告を出す段階から、改正後のルールに従っているか、労働条件の記載事項に留意する必要があります。

デジタル給与

2024.2月
給与のデジタル払い事業

令和5年4月に解禁された給与のデジタル払い。

まずはその事業へ参入しようとする資金移動業者(○○ペイなど)が厚生労働省へ指定申請を行い、審査を経て、基準を満たす業者に指定承認が出されることとなっています。
承認が出れば、会社等は業者を選び、実際に給与を○○ペイ払いすることが可能となります。

承認は遅滞
令和6年2月現在、PayPay、au、楽天、Airペイが申請しており、審査中との事。

しかし承認は、当初は令和5年夏頃と言われていましたが、基準が厳しいことなどから審査に時間がかかっており、遅れています(まだされていません)。


デジタル給与の実務
というわけで、まだ先の話ではありますが、では、業者が承認を受け、○○ペイで給与を支払うことがOKとなり、会社等が導入することとした場合、実務にはどのような影響があるのでしょうか?

従業員にとっては、それまで月1回の銀行振込だった給与が、たとえば週1回電子マネーで受取れるという事になれば便利かもしれません。
一方、会社等にとってはどうでしょうか。
メリットとしては、振込手数料の削減、企業イメージの向上、人材確保へ結びつくなどが想定されます。が、デメリットとしてかなりの事務負担増が予想されます。

まず、給与を電子マネーで支払うことにつき、就業規則の整備が必要になります。
そして従業員に対して制度の内容を説明してデジタル払いの選択肢を示し、各人別の管理を行うこととなります。
月1回以外の分割払いを行う場合は、社会保険料は変わらないとしても、源泉徴収税額表の適用区分が変わるケースも考えられます。
つまり事務作業が非常に煩雑になると思われます。

導入前には相談を
イメージとしては“斬新でスマートな方法”と言う感じなのですが、実務においては会社等の負担増大が懸念されます。

上記以外にも、分割払い時の支払金額についてなど、労務上及び税務上、注意すべき点がいくつもあります。
実際に導入を検討する場合には、社労士(できれば兼税理士)へ相談する事をお勧めします。

労災保険

2024.1月
労働者を1人でも雇ったら労働保険加入義務

自分ひとりで事業を行うのではなく、労働者を雇っている場合には、雇用形態にかかわらず(パート・アルバイト・派遣等でも)また人数にもよらず(労働者が1人でも)労働保険の適用事業となります(農林水産の事業の一部は除く)。
よって事業主は、労働保険の成立手続を行い 、労働保険料を納付しなければなりません。

「労働保険」とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の総称です。
それぞれ、何のためのどのような保険なのでしょうか?

労災保険とは
労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や亡くなった場合に、被災労働者や遺族を保護するための給付等(療養補償給付や労災年金等)を行う保険です。

労働者の仕事上のケガなどについては、本来は労働基準法上、療養(治療など)のために必要な費用を負担するなどの補償(災害補償)責任は、事業主にあるとされています。しかし、大きな事故などにより一度に多額の補償をしなければならなくなった場合、一事業主単独では十分な補償ができないケースも考えられます。
たとえば労働基準法で定める災害補償金額は、障害補償であれば最高で平均賃金の1,340日分にもなります。よって、事業主は労災保険へ加入して保険料を支払い、いざという時には国が事業主の災害補償責任を代行することとしたのが労災保険です。

労災保険は、パート・アルバイト等の短時間労働者であっても、労働者であれば対象となります。
たとえば仕事中にケガをしたら、治るまで無料で療養(治療、入院等)を受けられます。
また一定期間働けなくなってしまった場合の休業補償給付障害が残った場合の一時金や年金なども用意されています。

保険料は、全額事業主負担です。
労災保険料は、全ての労働者に支払った賃金総額(年度計)に保険料率をかけて算出します。
事業の種類ごとに保険料率が定められており、たとえば小売業であれば3/1000です。

雇用保険とは
労働者が失業した場合や働き続けることが困難になった場合、また自ら教育訓練を受けた場合に、生活・雇用の安定と就職の促進を図るための給付等(失業保険等)を行う保険です。

雇用保険は、一定の要件(週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込等)を満たす労働者であれば対象となります。

保険料は、事業主と労働者双方で負担します。
雇用保険料は、賃金額に保険料率をかけて算出します。
事業の種類ごとに保険料率が定められており、一般の事業であれば事業主9.5/1000、労働者6/1000、合計15.5/1000となっています。


労働保険の成立手続
労働保険の適用事業となったら(労働者を1人でも雇ったら)、労働保険の「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署orハローワークへ提出しなければなりません。
その後、労働保険料を年度ごとに計算し、概算保険料を申告・納付することとなります。

事業の存在を確認する場合があるため、必要資料を事前に電話等で問い合わせてから行くとよいでしょう。

被扶養者資格の再確認

2023.12月
協会けんぽ提出期限は令和5年12月8日(金)
毎年11月頃、会社等へ送られてくる健康保険の被扶養者資格再確認の書類。
該当者(従業員の社保の扶養に入っている家族等)があれば、会社等は各従業員に対し、家族等の収入状況などに変化がないかを口頭or書面で確認し、その結果を被扶養者状況リストへ記載するなどして提出しなければなりません。
今回の協会けんぽへの提出期限は令和5年12月8日(金)と目前に迫っています。



収入要件は年収130万円未満
さて、引き続き被扶養者でよいとされるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、要件の一つに「年収130万円未満(年齢等によっては180万円未満)」という収入要件があります。いわゆる“130万円の壁”と言われているものです。
年収130万円以上になると社保の扶養を外れることとなり、特に配偶者の場合には、同時に国民年金の被扶養配偶者からも外れるため、影響が大きいとされています。
けれどもインパクト大の金額であるにもかかわらず、この130万円という金額についてのパンフレットや冊子等の説明は抽象的で分かりづらく、実務上どう考えればよいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。



給与収入130万円とは?
実務上の考え方
協会けんぽの場合、被扶養者の給与収入についての考え方は、算定基礎届における標準報酬月額のような厳密なものではないとされています。
算定基礎では原則、毎年4月~6月支給分(3ヶ月)の給与額から標準報酬月額が算出され、その後1年間の社保料が決定されます。
けれども被扶養者については、年収130万円≒給与月額10.8万円と換算し、月10.8万円をオーバーする月が数か月連続したとしても、即、扶養を外れるのではなく、仮にその後は給与が減り平均で考えると月10.8万円未満となるなら、扶養継続してよいこととされています。
対象が3ヶ月とされているようなこともなく、様子見をして判断すればよいという事です。



「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書
上記の考え方(給与はしばらく様子を見て平均で考える)をしても恒常的に月収10.8万円以上となり、年収130万円のラインをオーバーする人は、扶養を外れるのが原則です。
しかし今回、厚労省「年収の壁・支援強化パッケージ」が示され、130万円の壁を超えても一定の場合には2年間に限り扶養継続可能とする措置が設けられました。
一定の場合とは、次の2つを満たす場合です。
・その収入増加が、雇用契約内容の変更(時給アップや所定労働時間の増加など)によるものでない、あくまでも人手不足による労働時間延長等に伴う一時的なものであること。
・上記内容の一時的な収入変動であることを、被扶養者を雇用する事業主が書面で証明すること。
該当する場合には、被扶養者の雇用主に証明書を作成依頼して入手し、協会けんぽへ添付提出することになります。
収入に上限額は設けられておらず、事業主の証明書へ個別の理由は記載不要です。



給与収入以外の収入130万円とは?
実務上の考え方
被扶養者の収入が給与以外、たとえば自営業者や失業手当受給者などの場合には、また別の実務上の考え方があります。
困った時は、社労士等or協会けんぽや年金事務所へ相談するとよいでしょう。

就労調整103万円の壁の誤解

2023.11月
103万円の壁とは
巷に広く知れ渡っている“103万円の壁”という言葉。
パート勤務して家計を補助している人が年収103万円を超えると何かタイヘンな事になる!?と信じられているようですが、その情報は正しいのでしょうか?



103万円の意味
そもそも103万円とは、どこから出てきた金額なのでしょうか?
まず、103万円とは給与の年額、いわゆる年収を指します。
今、パート勤務で年収103万円(月額8.5万円程度)の人がいたとします。
その人のその年の所得税の計算は、
103万円―55万円(給与所得控除額)=48万円・・・給与所得
48万円(給与所得)―48万円(基礎控除額)=0円・・課税所得
となり、課税所得がゼロなので所得税額もゼロとなります。
つまり103万円とは、本人に所得税がかからないMaxの給与年収です。
では、この壁を超えると何かタイヘンな事が起こるのでしょうか?



103万円前後の本人の税金比較
税金比較さてこれを見てどう考えるでしょうか。
本人の税金は、年収103万円を超えたとたんにオオゴトになっているでしょうか?
住民税均等割さえもゼロになる年収は965,000円までです(愛媛県松山市)。
そして住民税所得割(10%)がかからない年収というなら100万円までです(愛媛県松山市)。
また「年収は増えるが手取額は減る」などということも起こっていません。
何かが大きく変わるラインは、103万円ではないようです。



本人でなく夫などの税金が高くなる?
ではなぜ「103万円!103万円!」と皆が気にしているのでしょうか?
パート勤務の自分でなく、もっと稼いでいる夫などの税金が高くなるから・・と思っているなら、それは昔(5年以上前まで)の話です。
現在は、たとえば夫が一般的な所得の場合、妻のパート年収が103万円を超えても150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除38万円が設けられており、妻の年収が103万円を超えたからと言って夫の税額がいきなり増える事はありません。(年収150万円までは全く影響無し、150万円を超えても約201万円までは何がしかの配偶者特別控除あり)
ただし130万円の社保の扶養のライン(いわゆる130万円の壁)には注意が必要かもしれません。



思い込みによる就労調整
これから年末にかけて、さらなる人手不足が心配・・という事業所において、パート従業員から「扶養の範囲で103万円までしか働けない」と言われた時には、超えると本当に問題があるのか、確認してみるのがよいでしょう。
唯一、103万円を死守する意味があるケースとしては、夫などの勤務先から103万円基準で家族(扶養)手当が出ている場合があります。家族手当は年十数万円程度となるため、それが無くなると家計への影響は大きいと思われます。その場合は、103万円の壁を意識せざるをえないかもしれません。
けれども「自分に所得税がかかるから」「夫の税金が高くなるから」という単なるイメージや誤った情報に左右されて、ほとんど意味のない就労調整をしている人も多いようです。
所得税がかかると言ってもごく少額であり、配偶者の税金へは実質ほとんどの人は影響しないことを知れば、103万円を超えて働く人が増え、労使ともに無理なく人手不足が解消される可能性があります。
後日トラブルにならないか心配な場合等は、社労士or税理士へ相談するとよいでしょう。

年収の壁・支援強化パッケージ

2023.10月
厚生労働者が「年収の壁」対策の適用開始を発表

今月(令和5年10月)から、いわゆる年収の壁(年収103万円、106万円、130万円などのライン。そのラインを超えるとパートタイマー等である本人の税・社会保険料負担が生じ、目先の手取額が減ることから、超えない範囲内で就業調整している人が多いとされている。)問題の解消のため、「年収の壁・支援強化パッケージ」として3つの対策が適用開始される旨が発表されました。



なぜ今、何のために支援策が設けられたのか
パートタイマー等で配偶者のいわゆる扶養に入っている人の場合、これまでも年収の壁は意識され、就業調整もされていました。
ではなぜ今月から、さまざまな対策が適用開始されたのでしょうか?
今月(令和5年10月)は、最低賃金がアップされる最初の月です。よって、上記のパートタイマー等が仮に前月まで前年度の最低賃金(時給)で働いていたとすると、今月から時給はアップされ、年収も上がると予測されます。
それにより、新たに年収の壁問題が発生→就業調整→繁忙期の年末に向けて企業の人手不足に拍車がかかる、という困った事態が想定されます。
それを避けるために、壁の高さに応じて、就業調整せずとも目先の手取額が減らない仕組みを期間限定(2年~3年)で用意しました、というのが今回の支援策であるように思われます。



対策の内容
厚生労働省のHPに掲載のパンフレットによると、対策は壁の高さごとに3つ設けられています。具体的な内容の詳細は、今後順次公表予定とされています。
「103万円の壁」対策⇒企業への配偶者手当の基準見直しの働きかけ
何とも抽象的な表現だと感じますが、分かりやすく言うと『就業調整の主原因は、パートタイマー等の年収が103万円を超えると配偶者の会社等から毎月××万円支給されていた“配偶者手当”がもらえなくなることである。よって会社等が103万円基準を見直すことで壁を解消してもらいたい』ということかと思われます。
「106万円の壁」対策⇒助成金1人Max50万円/3年間
令和5年10月現在、従業員100人超の会社等で働く、要件を満たす人(≒年収106万円以上の人)は、自分で社会保険(健康保険・厚生年金)へ加入する必要があります(令和6年10月からは従業員50人超の会社等へ対象拡大)。
自分で加入すると目先の手取額は減りますが、将来の年金額は1/2は会社等負担で増加するなど、必ずしも不利ではありません。けれども現状では周知不足による誤解などが原因で、壁の範囲内での雇用契約が多く締結されています。
そのような会社等に対し、壁を超え社会保険加入をしても従業員の手取額は減らないよう手当を支給するならば期間限定(3年間)で助成金を出し、さらに社会保険料の算定にも配慮する、というものです。
「130万円の壁」対策⇒事業主証明で2年間は130万円超でも現状維持
パートタイマー等の勤務先が従業員100人超の会社等でない場合は、106万円の壁問題はなく、年収130万円未満であれば配偶者等の社会保険の扶養に入ることができます。
つまり自分では健康保険料や国民年金の掛金を負担することなく、配偶者の会社等の健康保険の扶養に入り、将来は国民年金を受給することができます。
年収見込が130万円以上になるとそういうわけにはいかず、自分で国民健康保険料と国民年金の掛金を負担せざるをえなくなります。
けれども今回、2年限りの措置として、年収見込が130万円以上になっても現状のまま、被扶養者として取扱うこととされました。



会社等の実情に合った対応を
パートタイマー等の社会保険加入についてどのように取扱うかは、会社等の規模や経営者の考え方によっても異なると思われます。
会社等の側から見た場合、今回の助成金などは、本来の負担を当面大幅に軽減し短時間労働者の社会保険加入を促すものですが、要件を満たし支給申請もクリアし1人につき50万円受け取ったとしても、助成金がなくなった3~4年後からはどうするかのシミュレーションも必要です。
個人的には、103万円の就業調整をしている従業員がいれば、この機会に正しい情報を提供し就業調整をやめてもらうというのも有効な人手不足解消の手段になるのではと考えます。理由は、配偶者の会社等からの“配偶者手当”がない人でも巷の「103万円超えると損」という誤った情報を信じて調整している場合が多いようだからです。
また仮に、これをうまく利用してぜひ社保加入を進めたい、という場合は、申請にチャレンジしてみるのもよいでしょう。その場合は、自社で申請するよりも社労士へ依頼したほうが負担が少ないかもしれません。

最低賃金額の改正

2023.9月
改正後の愛媛県最低賃金は1時間897円
最低賃金とは、国の定める賃金(給与)の最低ラインで、単位は時給で考えます。
原則、都道府県ごとに定められ、毎年7月頃に発表され、その年の10月から新しい基準が適用されます。
現在(~令和5年10月5日)の愛媛県の最低賃金は853円ですが、令和5年10月6日からは改正により44円アップの897円となります。
正社員、パート、アルバイト等にかかわらず、また労使の合意があったとしても、このライン以上の賃金を支払っていない会社等は最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金が科されることがあります。
では、そのチェックは具体的にはどうすればよいのでしょうか?



チェックは時給に直して比較
パート、アルバイト等で時給制なら、そのまま比較すれば時給が安すぎないかチェックできます。
日給であれば、その額を1日の所定労働時間(その従業員がその会社等で1日何時間働くことになっているか)で割って時給に換算すればわかります。
では、月給の場合はどうすればよいのでしょうか?月給を時給に換算する・・・わかるようなわからないような感じかもしれません。
月給の場合は、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。
決められたものとは?そして月平均所定労働時間とは、具体的に何のことなのでしょうか。



月給のうち合計するものは・・
給与明細内訳として、基本給以外にもいろいろな手当が用意されていることがあります。
すべて給与ではあるのですが、最低賃金と比較する時には、毎月支払われる基本的な賃金だけが対象となります。具体的には“合計しないもの”が決められているので注意が必要です。
合計しないもの・・・臨時的な賃金(報奨金・結婚手当等)、残業手当等、皆勤手当、通勤手当、家族手当、毎月支払でない賃金(賞与等)
よって、合計するものは何か?と言えば、基本給と、たとえば職務手当、住宅手当等となります。



月平均所定労働時間とは
会社等で決められた“年に何日働くか”が「年所定労働日数」です。
そして同じくその会社等で決められた“1日に何時間働くか”が「所定労働時間」です。
よって、(年所定労働日数×所定労働時間)÷12で『月平均所定労働時間』が算出できます。
「所定労働時間」は会社等で決められた時間であり、個人との間で交わした雇用契約書(or労働条件通知書等)や就業規則に定めがあると思われます。「年所定労働日数」は会社等のカレンダーどおりでカウントします(365日から会社等の休日を引くなど)。



事例Q&A
Q:月給22万円(内訳:基本給15万円、通勤手当1万円、皆勤手当1万円、住宅手当1万円、残業手当4万円)。年所定労働日数244日、所定労働時間7.5時間の場合、最低賃金法(改正後)は大丈夫でしょうか?
A:問題ありません。
まず、月給のうち合計するのは基本給と住宅手当なので15万円+1万円=16万円・・①
月平均所定労働時間は(244日×7.5時間)÷12=152.5時間・・②
①/②=1,049円>897円なので、勤務地が愛媛県であれば最低賃金を下回っておらず適法という判定になります。
仮に勤務地が東京であれば、東京の最低賃金(改正後)は1,113円なので、問題があります(安すぎます)。



知らないうちに法違反となっていることも
最低賃金額は毎年改正され少額ずつですがアップしているため「経営者が日々事業に忙殺されていたら知らないうちに法違反となっていた・・」という事例もあるようです。
指摘されて発覚し、後日無駄な時間と労力、金銭を費やすなどという事態にならないように、この機会に給与額のチェックを行っておくことが望ましいと思われます。
自社等でチェックが困難な場合等は、社労士へ相談するとよいでしょう。

産前産後の国民健康保険料免除は令和6年1月施行

2023.8月
国民年金保険料の免除はすでにある

自営業者等(いわゆる国民年金第1号被保険者)が出産することとなったとき、国民年金保険料が免除される制度は、2019年4月からすでに施行されています。
市へ届出すれば、産前産後4ヶ月間の国民年金保険料納付が免除されます。そして将来もらう国民年金の計算においては、その4ヶ月分も保険料を納付したものとして取り扱われるという有利な制度です。
会社員の厚生年金保険にも、同様の制度があります。



健康保険についても会社員と同様の免除へ
令和5年8月現在、会社員であればすでに健康保険についても、申請により産前産後の保険料が免除される制度がありますが、国民健康保険には同様の措置はされていません。
しかし子育て世帯の負担軽減などのため、今回、令和6年1月から新たに、自営業者等の国民健康保険加入者についても、産前産後4ヶ月間の保険料(均等割・所得割とも)免除がされることとなりました。
届出等の詳細はまだ案内されていませんが、国民年金と同様に、届出により免除される仕組みになるかと思われます。



国民年金の免除なんて知らなかった!という場合
国民年金の免除の届出は、出産後であっても可能です。そして届出をしなければ免除にはなりません。
自分も該当したのでは・・?と思った方は、市などへ問い合わせて確認し、対象となるのであれば届出することをお勧めします。理由は、制度を知らずにor失念していたなどで、いったんは納付してしまっていた場合でも、届出すれば、産前産後期間の保険料は還付される(戻ってくる)からです。
自力ではムリ・・という方は、社労士等へ相談するとよいでしょう。

算定基礎・年度更新後の業務 | 届出期限7月10日その後は?

2023.7月
算定基礎届(社保)・年度更新(労保)届出期限は7月10日
会社等において年に1回必須の届出、算定基礎届と労働保険年度更新。提出期限の7月10日を過ぎました。
自社等で作成から提出まで行う場合、なかなか煩雑かつ給与に関係する責任の重い業務であり、担当者は提出後ほっと一息といったところではないでしょうか。
ところで、社会保険(健保厚生)の算定基礎、労働保険(雇用労災)の年度更新、それぞれの提出後にはどのような業務が発生するのでしょうか?



労働保険年度更新の提出後
労働保険については、通常ほとんど手間はかかりません。
今後1年間、労働保険料の支払を期限までに滞りなく行えば、それで問題ありません。銀行の口座振替手続をしていれば、引落されるだけです。



算定基礎届の提出後
社会保険については、多少煩雑な業務が発生します。
今回提出した算定基礎届をもとに年金事務所において、各従業員等の新しい(令和5年9月~令和6年8月分)標準報酬月額が決められ、会社等へ「標準報酬月額決定通知書」が送られてきます。
「標準報酬月額決定通知書」には各人ごとの新しい“標準報酬月額:×××千円”と“適用月:令和5年9月”等の記載がされています。
よって、該当月以降の給与計算においては、新しい標準報酬月額に見合う社会保険料を徴収しなければなりません。給与計算ソフトを使用している場合には、正しいタイミングで標準報酬月額の設定を変更する必要があります。



9月分からとは具体的にいつのことか
ここで、令和5年9月分からとは、具体的にはいつのことなのでしょうか?
給与計算は会社等によりやり方が異なる部分があるなどのため、一般的な説明を読むだけではタイミング等がわからないかもしれません。そんな時は、社会保険料率の変更3月2023-社労士-と同様に考えれば大丈夫です。
給与計算ソフトの設定で言うと「翌月徴収」などのメニュー(原則的な徴収方法)を選択している場合は、10月中(10/1~10/31)に支給日がある給与から適用となります。
そうでなく給与計算ソフトで「当月徴収」メニュー(実務ではよく見かける方法)を選択している場合は、会社等は「当月分社保料を給与から控除している」ので、9月中(9/1~9/30)に支給日がある給与から適用となります。


将来の年金額等にも影響あり
「標準報酬月額決定通知書」が届くのはまだ少し先(9月頃)ですが、社会保険料の計算は従業員等の将来の年金にもダイレクトに影響してきます。正しいタイミングで切り替えできるよう準備しておくとよいでしょう。

売上キープしつつ休日増、年収増で新卒応募者数が9倍に増えた企業

2023.6月
労働新聞令和5年5月22日号の衝撃的な記事
令和5年5月24日(水)社会保険労務士会研修会で配布された労働新聞に、興味深い記事が載っていました。
神奈川県で不動産・建築業を営む(株)建新。3年前は休日も少なく、長期間労働・土日出勤は当たり前という業界イメージ通りの環境。結果、若い人材は定着せず平均年齢も高くなっていたところ、法改正を睨み、働き方の見直しに着手した。



少しずつだが着実に進められたオリジナルな手法
“働き方改革”先行企業の事例によくある「選択制」や1日10時間労働への延長、月給を4/5にするなどのやり方は一切採っていない。
PC強制シャットダウン制度などでダラダラ残業を防ぎつつ、工程管理クラウド導入で時短を実現。また休日については慎重に、部署ごとに適切な曜日を週休2日制にして様子見
労働時間を削減し、休日数を増やしても売上が減少しないことを確認すると、さらに週休3日制へのチャレンジを開始した。

1年間をテスト期間と位置付け、比較的残業の少ない社員に呼び掛けて希望日に特別有給休暇を付与その後も対象者を増やしたり対象月を変更するなどして、業務遂行上の支障がないか、売上が減少しないかを確認。
どちらも問題なく、従業員からも「自己研鑽に励める」など前向きな意見が多く聞かれるなど反応が良かったため、月1回「週4日勤務」へ会社カレンダーを作り直した



気になるお金の面にも対応済
給与額についても減らないように、ちゃんと配慮されている。
減少した残業代は、ベアや初任給アップ、各種手当や賞与の増額などで社員に還元。
結果、年収は1~2割アップとなった。



人材確保も順調に
新卒採用に関してのエントリー数は急増し、前年比で9倍増に。
一方、退職者は激減し、離職率は1割以下に。
平均年齢も30歳代後半に若返った。



まだ続く改善
現在の年間休日は132日と多いが「2030年には完全週休3日制へ移行する」という目標が掲げられている。
専務によれば「休日数は徐々に増やしていく。売上を維持しながら、どのように実現していくかについて試行錯誤を重ねたい」との事。

3年間かけて地道にしかし着実に職場環境を見直し改善したことで、素晴らしい成果が出ている事例と思います。

在職老齢年金|令和5年度の支給停止調整額は48万円

2023.5月
毎年見直される在職中の老齢厚生年金の支給停止ライン
会社の役員や従業員などが一定年齢に達すると、在職(厚生年金に加入等)しつつ年金を受給する権利が発生します。しかし受給の際に、給与と厚生年金の合計額が多額になると、厚生年金が減額されることがあります。
そのラインは令和4年度は47万円でしたが、令和5年度は48万円へ改定されています。



年金支給停止ラインの判定式
ところで、給与と厚生年金の合計額とは、実際にはどのように計算されるのでしょうか。
会社等は年金事務所へ「算定基礎届」や「報酬月額変更届」、「賞与支払届」等を提出しています。その届出に基づき自動的に計算される“標準報酬月額”や“標準賞与額”が判定に使われます。
具体的には、その月現在の
①標準報酬月額(Max65万円)
②前1年間の標準賞与額(Max150万円/月)の合計×1/12
③老齢厚生年金の月額
の合計が『給与と厚生年金の合計額』とされ、①+②+③が48万円を超えると年金が減額されます。



どのくらい減額されるか
上記①+②+③>48万円の場合、48万円をオーバーした金額の1/2だけ年金が減額されます。
減額される金額(支給停止額)は毎月変動する可能性があります。
理由は、①の標準報酬月額は随時改定される可能性があるため、また②は毎月1ヶ月ずつ集計期間がずれるため金額が変動する可能性があるからです。
支給停止額は年金事務所で自動的に調整され、会社や本人(役員・従業員)の手続は不要です。
なお、減額された年金はその後支給されることはありません。

定年後の継続雇用者等への対応
定年後も続けて働く従業員がいる場合、在職老齢年金のしくみを知っていれば、年金を満額受給しながら、無理のない範囲で働き相応の給与を受け取ってもらうという事も可能かもしれません。
また、役員が該当することとなった場合にも、給与額の設定時に正しい知識をもとに在職老齢年金を考慮することで、想定外の事態になることを避けられるかもしれません。
年金減額されないことがすべてではありませんが「こんなはずではなかった・・」などのトラブル防止のためにも、該当する従業員がいれば適切な案内をしてあげると喜ばれるのではないでしょうか。
より詳細な説明を求められたり個別質問などがあれば、社労士や年金事務所等へ相談するとよいでしょう。

令和5年4月から雇用保険料率&割増賃金率アップ

2023.4月
給与計算を誤らないよう注意
令和5年4月1日から、給与計算で使う料率が2つ変更になります。
雇用保険と割増賃金(中小企業での月60時間超の時間外労働)について料率がアップします。
給与計算ソフト等の設定も含め、対応を失念しないよう注意が必要です。



雇用保険
一般の事業(農林水産・酒造・建設業以外)の場合、労働者負担(給与から天引き)の雇用保険料率は令和5年3月までの5/1,000→6/1,000となります(0.1%アップ)。



割増賃金
令和5年3月までは、中小企業であれば月60時間超の時間外労働についても月60時間以内と同一の25%以上の割増率でよいとされていました。
しかし今月(令和5年4月)からはその猶予措置は無くなり、企業規模を問わず月60時間超の時間外労働については50%以上の割増率での給与計算が強制適用されます。



給与計算実務は煩雑
月60時間超となるような時間外労働が無ければ悩むことはありません。
けれども該当しそうであれば、具体的な60時間のカウント方法、休日労働の取扱い、深夜労働との関係など、特に適用初回となる4月の給与計算を正確に行うことはハードルが高いかもしれません。
不安があれば社労士等へ相談するのがよいでしょう。

社会保険料率の変更

2023.3月
令和5年3月分(4月納付分)から変更
会社等へ協会けんぽ愛媛支部からパンフレットなどで案内が届いていると思われますが、令和5年3月分(4月納付分)から健康保険料率と介護保険料率が変更されます。


天引きする社会保険料合計は年齢にかかわらず微減
いわゆる「健保厚生」の「厚生」年金保険料率はすでに18.3%/2=9.15%でMaxに固定。
今回「健保」の健康保険料率が引き下げとなり、40才未満の人は10.26%/2=5.13%→10.01%/2=5.005%、40才以上の人は介護保険料率は引き上げですが(10.26%+1.64%)/2=5.95%→(10.01%+1.82%)/2=5.915%と、年齢にかかわらず社保徴収額は微減となります。


「3月分(4月納付分)から」とは正しくはいつから?
保険料率の変更はこれまでにも何回もありましたが、給与計算をするにあたり料率を変更するタイミングに悩んだことはありませんか?
今回であれば、「3月分(4月納付分)から」って3月支給の給与なのかor4月支給の給与なのか、よくわからない・・と思っていないでしょうか。


健康保険法・厚生年金保険法どおりなら4月中に支給する給与から変更
健康保険法第167条・厚生年金保険法第84条には、給与から控除できる保険料は前月分である旨規定されています。給与計算ソフトの設定で言うと『翌月徴収』などのメニューを選択している場合で、これが法律上のあるべき源泉徴収方法です。
その場合、今回の変更は4月中(4/1~4/30)に支給日がある給与から適用となります。いつ勤務した分の給与か(対応労務期間)は関係なく、いつ支給された給与か(支給ベース)で考えます。
締日、支給日、支給サイトなどは会社によりさまざまで、同じ会社であっても勤務形態によって異なることもあり、考えれば考えるほどわからなくなるかもしれませんが、どのような場合であっても上記のとおり考えればOKです。


当月徴収していたら
給与計算ソフトの設定で言うと『当月徴収』メニューを選択している場合、原則の方法ではありませんが、実務上はよく見かける方法です。
もし会社等が「当月分社保料を給与から控除している」のであれば、今回の変更は今月(令和5年3月)中(3/1~3/31)に支給日がある給与から適用となります。


賞与は3月1日以降が料率ダウン
賞与についてはスッキリしていて、パンフレットにも明示されているとおり、3月に支払う賞与から変更対象となります。

自分の年金額がスマホでわかる「公的年金シミュレーター」

2023.2月
ややこしい「年金ネット」を使わずにスマホで将来の年金額がわかる
厚生労働省が開発中の年金額簡易試算ツール「公的年金シミュレーター」
これまで年金試算するには「年金ネット」へ利用申込をして後日ユーザIDを郵送で入手、パスワードを設定し ・・とまずは準備に手間も時間もかかりましたが、そんなことをしなくてもだれでも使える年金額試算ツールが試行されています。
シミュレーションできるのは公的年金のうち老齢年金(老齢基礎つまり国民年金と老齢厚生年金)で、対象年齢は16才~71才となっています。



どうすればよいのか
入口は2つ。ねんきん定期便(厚労省から届くハガキ)があればそれに印刷されているQRコードから、なければ厚労省のサイトから、シミュレーターを呼び出すことができます。



ねんきん定期便がある場合
ねんきん定期便のハガキが手元にあれば、まずハガキのあちこちに4つくらいあるQRコードのうち『年金見込額試算用二次元コード』をスマホ等で読み取ります。すると自分の実際の年金加入履歴情報が自動的に取り込まれます。次に生年月日を要求されるので入力。



ねんきん定期便がない場合など
定期便(ハガキ)が見当たらない、QRコードが読み取れないなどの時は、自動で履歴を取り込むことはできませんが、厚労省のサイトからシミュレーターを使うことは可能です。
やり方は、まずはパソコンorスマホで“年金シミュレータ”と検索し、厚労省の「公的年金シミュレーター」(使い方ホームページではなく)をクリックします。すると生年月日を要求されるので入力し「試算する」ボタンをクリック。
いろいろ書いてあるが下へスクロールして「働き方・暮らし方の入力」で自分の年金加入履歴を入力していく。たとえば、会社員・公務員(厚生年金)に23才~32才まで年収300万円で加入→「+働き方・暮らし方の追加」で自営業・フリーランス(国民年金第1号)に33才~39才まで加入→「+働き方・暮らし方の追加」でパート・アルバイト(厚生年金)に40才~59才まで年収200万円で加入・・などと加入種別、年齢、厚生年金の場合は年収、国民年金の場合は付加年金納付の有無を入力していくことができ、都度「試算する」ボタンをクリックすればそれぞれの段階での将来の年金額も見ることができます。
実年齢以降の期間については、仮予測をいろいろ入力してみれば結果がどう変わるかがわかります。



免除期間の設定もできる
パッと見ではわからないのですが、国民年金加入期間について免除を受けていたなどの設定もできます。
入口は「+働き方・暮らし方の追加」の下にある「+受給開始年齢の入力欄を開く」。クリックすると「+国民年金保険料の免除期間の入力欄を開く」メニューが出るのでクリック。全額免除から1/4免除まで、受けていた期間の入力ができ、下部の「試算する」をクリックすると入力が結果に反映されます。



あまり細かいことは無理か
60才になった時、国民年金の満額をもらえる40年間納付に不足がある人は65才までは任意加入ができますが、この任意加入の入力画面は用意されていないようです。
ですが方法はあります。たとえば5年不足の場合であれば「+働き方・暮らし方の追加」でパート・アルバイト(厚生年金)に60才~64才まで年収0万円で加入と入力することで概算することは可能です。



入力完了したらスライドバーで自在に試算
設定(入力)するのはちょっと面倒ですが、それが終われば一番上の画面に戻ってスライドバーを操作することができます。
と言っても「今後の年収」や「就労完了年齢」は通常は予測が難しくあくまでも“もしこうなら・・”という仮の話になると思われます。
直観的にわかって便利なのは「受給開始年齢」をスライドバーで動かすだけで繰上げ・繰下げしたら年金額がいくらになるかが即わかる、という事でしょうか。

社会保険の二以上事業所勤務届

2023.1月
複数の会社で社保加入することがある?
社会保険(健康保険・厚生年金)へ加入するには要件があり、ざっくり言うと、ほぼフルタイムに近い状態で働くことです。よって一般従業員にとっては通常ありえない状態です。
ですが場合によっては複数の会社で加入することもあり得ます



社長が別会社をつくるとき
想定されるのは、たとえば会社の社長が別会社をつくりそこでも社長となった場合や、ある会社にフルタイムで一般従業員として勤務している人が同時に自分の設立した会社の社長となった場合などです。



何を届け出るのか
どの事業所を選択するかや、各事業所の報酬月額(給与額)などを届け出ます。



保険証はどうする?
今後の保険証は、選択した会社名の印字されたものになります。
もともとの会社を選択する場合も保険証番号が変わるため、返却することとなります。ただし通院しているなどの場合、新しい保険証が届いてから返却しても大丈夫です。



給与計算はどうするのか
この届出をすると、年金事務所から各会社宛てに「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」が届きます。その書類に記載されている保険料を控除すればOKです。



保険料の算出方法
年金事務所がやってくれることですが、どうなっているかというと、届け出た報酬月額を合算したものを標準報酬月額として扱い、それに対する保険料額を各事務所の報酬月額で按分して各事業所の保険料を算出します。



将来の年金額
合算した標準報酬月額をもとに計算されます。



無報酬なら届出不要
社長であっても無報酬(役員給与ゼロ)であれば被保険者にはならないため、この届出は不要です。



後日発覚はリスクあり
年金事務所の調査等で届出漏れが後日発覚すると、2年間遡って社会保険料を徴収されるリスクがあります。多額になりペナルティを課されることも予想されます。失念しないよう注意が必要です。

賞与計算の源泉徴収

2022.12月
賞与計算の社保は定率だが源泉税は例外あり
会社等から賞与を支給するとき、社会保険料(健保・厚生)は給与と同率(15%程度)を天引きします。
では、源泉所得税についてはどうなっているのでしょうか?



通常は賞与用の一覧表
少し詳しい人は「あー賞与用の表があって、前月の給与内訳などから税率を決めるんだよね」と知っているかもしれません。ほぼそれで正しいのですが、例外もあります。



前月給与の10倍超の賞与は例外計算
それは賞与が前月の給与の10倍超のときです。
そんな多額な賞与を支給するのはレアケースかもしれませんが、素晴らしい営業成績だったなどで10倍超に該当することもあります。実務で出会ったこともあります。その場合の源泉税は別の方法で計算しなければなりません



具体例
たとえば前月の給与総支給額が20万円の40才のサラリーマン(扶養1人)に300万円の上半期賞与を支給するとき、例外を知らないと賞与用の表を使ってしまい(300万円-社保45.3万円)×2.042%=52,009円の源泉税だと思ってしまいますが、正しく計算すると224,760円となります。(計算方法の詳細は国税庁タックスアンサーNo.2523賞与に対する源泉徴収)



給与計算ソフトなら自動計算
現在はほとんどの会社等で給与計算ソフトを使っており、その場合は源泉税も自動計算されるので誤らないかもしれませんが、手計算の場合は注意が必要です。
また、従業員などから「源泉税が多く引かれすぎなのでは?」と質問されたとき、例外だとわかっていれば納得してもらえる説明ができます。



源泉漏れにはペナルティ
最終的には年末調整で年税額が確定し、年の中途の源泉税の過不足は精算されますが、源泉徴収義務はその都度課されるものなので、発覚すれば源泉漏れのペナルティ対象となりえます。
発覚しなかったとしても、10倍超の賞与に対し誤って少ししか天引きしていないと年末調整で還付どころか不足額を徴収しなければならなくなりクレームにつながるリスクもあります。



自動計算が正しいかわからないとき
他にも変則的な場合に通常とは異なる取扱いをすることがあります。
給与計算ソフトで???と思う金額になったときは社労士に聞いてみるとよいでしょう。

従業員の健康診断

2022.11月
定期健康診断は義務

会社や事業主は、業種や規模に関係なく、常時使用する労働者に対し、1年に1回は定期健康診断を受けさせなければなりません。



労働安全衛生法
内容は労働安全衛生法により規定されています。
①対象者の範囲
フルタイム従業員及び、パートタイマーやアルバイトであっても1年以上の期間、フルタイム従業員の3/4以上程度働くなどの契約であれば、対象となります。
②ストレスチェック
心理的な負担の程度を把握するための検査。常時使用する労働者が50人未満の事業場については、必須ではなく努力義務です。
③費用の負担
定期健康診断は法定健診なので、費用は原則、事業主負担です。
一方、受診にかかった時間の賃金は、事業主負担が望ましいが労使協議によることとされています。つまりノーワーク・ノーペイの原則によってもかまわない(支払わなくても法違反ではない)ということです。
④結果通知
受診結果は、異常の有無にかかわらず、遅滞なく労働者へ通知しなければなりません。
異常の所見があれば、事業主が医師の意見を聴き、必要な再検査を勧奨し、就業上必要な措置を講ずること(負荷の軽減など)が求められています。
⑤書類の保存義務
結果の記録は5年間の保存義務があります。



罰則もある
小規模な会社や個人事業者の場合、知らずに法違反となっていることがあるかもしれません。
“定期健康診断を受けさせない”“本人へ結果を通知しない”“結果の記録を保存しない”ことは、いずれも罰則(50万円以下の罰金刑)の対象でもあります。



詳細は社労士へ相談
対象者かどうかなど不明点があれば社労士へ相談し、適正な労務管理を行うことが望ましいでしょう。

士業事務所の社保強制加入

2022.10月
令和4年10月から士業事務所社保強制加入
今月(R4.10月)から、これまで任意適用だった士業の個人事務所(社労士、税理士、弁護士等)の社会保険加入についての改正が適用されます。



個人の自由業についての改正内容
これまでは個人の自由業(社労士、税理士、弁護士等)は適用対象の法定16業種に含まれておらず、「非適用業種」として任意加入でした。
しかしR2年改正により適用対象業種に“弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業”が追加され、今後は常時5人以上の従業員を雇用する士業の個人事務所は社会保険(健保・厚生)の強制適用事業所となります。



従業員5人以上なら強制加入
つまり従業員が5人未満でない限り、強制加入となりました。
被保険者の判定はこれまでと同じで、フルタイム及びパート・アルバイトであってもフルタイム従業員の3/4以上の勤務をしていれば、加入義務があります。



届出失念に注意
社労士事務所での失念は無いと思われますが、他の士業の事業主は、届出を怠ることのないよう注意が必要です。
対象か否かや具体的手続きなどがわからない時は、社労士へ相談するのがよいでしょう。

愛媛県松山市の税理士・社会保険労務士です。
鹿島徹子税理士・社会保険労務士事務所
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