2024.9月
改正後の愛媛県最低賃金は1時間956円
最低賃金とは、国の定める賃金(給与)の最低ラインで、単位は時給で考えます。原則、都道府県ごとに定められ、毎年7月頃に発表され、その年の10月から新しい基準が適用されます。現在(~令和6年10月12日)の愛媛県の最低賃金は897円ですが、令和6年10月13日からは改正により59円アップの956円となります。
今回のアップは、引上げ額(59円)・引上げ率(6.58%)ともに過去最高です。そして引上げ額(59円)は全国で2番目の大幅アップとなりました(全国トップは徳島県の84円増)。
正社員、パート、アルバイト等にかかわらず、また労使の合意があったとしても、このライン以上の賃金を支払っていない会社等は最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金が科されることがあります。
では、そのチェックは具体的にはどうすればよいのでしょうか?
チェックは時給に直して比較
パート、アルバイト等で時給制なら、そのまま比較すれば時給が安すぎないかチェックできます。日給であれば、その額を1日の所定労働時間(その従業員がその会社等で1日何時間働くことになっているか)で割って時給に換算すればわかります。
では、月給の場合はどうすればよいのでしょうか?月給を時給に換算する・・・わかるようなわからないような感じかもしれません。
月給の場合は、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。
決められたものとは?そして月平均所定労働時間とは、具体的に何のことなのでしょうか。
月給のうち合計するものは・・
給与明細内訳として、基本給以外にもいろいろな手当が用意されていることがあります。すべて給与ではあるのですが、最低賃金と比較する時には、毎月支払われる基本的な賃金だけが対象となります。具体的には“合計しないもの”が決められているので注意が必要です。
合計しないもの・・・臨時的な賃金(報奨金・結婚手当等)、残業手当等、皆勤手当、通勤手当、家族手当、毎月支払でない賃金(賞与等)
よって、合計するものは何か?と言えば、基本給と、たとえば職務手当、住宅手当等となります。
月平均所定労働時間とは
会社等で決められた“年に何日働くか”が「年所定労働日数」です。そして同じくその会社等で決められた“1日に何時間働くか”が「所定労働時間」です。よって、(年所定労働日数×所定労働時間)÷12で『月平均所定労働時間』が算出できます。
「所定労働時間」は会社等で決められた時間であり、個人との間で交わした雇用契約書(or労働条件通知書等)や就業規則に定めがあると思われます。「年所定労働日数」は会社等のカレンダーどおりでカウントします(365日から会社等の休日を引くなど)。
事例Q&A
Q:月給22万円(内訳:基本給15万円、通勤手当1万円、皆勤手当1万円、住宅手当1万円、残業手当4万円)。年所定労働日数244日、所定労働時間7.5時間の場合、最低賃金法(改正後)は大丈夫でしょうか?
A:問題ありません。
まず、月給のうち合計するのは基本給と住宅手当なので15万円+1万円=16万円・・①
月平均所定労働時間は(244日×7.5時間)÷12=152.5時間・・②
①/②=1,049円>956円なので、勤務地が愛媛県であれば最低賃金を下回っておらず適法という判定になります。
仮に勤務地が東京であれば、東京の最低賃金(改正後)は1,163円なので、問題があります(安すぎます)。
知らないうちに法違反となっていることも
最低賃金額は毎年改正され少額ずつですがアップしているため「経営者が日々事業に忙殺されていたら知らないうちに法違反となっていた・・」という事例もあるようです。
厚生労働省の公表している2023年度データからも、従業員30人未満の中小事業者における影響率(最低賃金を引上げた場合に、現在の時給がそれを下回ることになる労働者の割合)は愛媛県17.3%(全国平均21.6%)と、最低賃金に近い水準の時給も一定割合あることが読み取れます。
指摘されて発覚し、後日無駄な時間と労力、金銭を費やすなどという事態にならないように、この機会に給与額のチェックを行っておくことが望ましいと思われます。
自社等でチェックが困難な場合等は、社労士へ相談するとよいでしょう。