2024.3月
令和6年1月1日から電子取引データ保存義務化
令和6年に入ってからすでに2ヶ月超経過していますが、“電子帳簿保存法(電帳法)”“電子取引データ保存義務化”“スキャナ保存?”などの言葉が飛び交い、結局、何をしなければならないのか・・・?悩んでいる個人事業者or会社等の経理担当者も多いのではないでしょうか。
一体何が義務化されたのか?そして、全ての事業者が対応しなければならないことは何なのでしょうか?
一言でいうと『事業者は事業規模等にかかわらず、令和6年1月1日以降に電子取引を行なったならば、その電子データそのものを保存しておかなければならなくなった』ということです。
では、最近よく聞く“電帳法”と“電子取引データの保存義務”の位置関係はどうなっているのでしょうか。
電帳法には3つある
電子帳簿保存法(電帳法)と言った場合、その内容には3つの区分があります。
1.以前からある電子帳簿等(帳簿・書類)保存制度
・・・帳簿(元帳・仕訳帳など)・書類(B/S・P/Lなど)を紙でなく電子データで保存する
2.スキャナ保存制度
・・・紙原本の書類(領収書・契約書など)を画像データで保存する
3.電子取引データ保存制度
・・・注文書・契約書・請求書・領収書等を電子データでやり取りしたら電子データを保存する
1と2は、以前に比べると要件が緩和されたと言われていますが、細かい要件を満たさなければ認められず、現実には高額なシステムを導入等しなければ困難と思われます。
そして1と2は義務ではなく選択適用(任意)です。
今回義務化されたのは3で、これは3区分ある電帳法の1つです。
保存すべき電子取引とは?
ではそもそも電子取引って何を指すのでしょうか?
電子取引とは、たとえば
・電子メールで請求書や領収書等のPDFファイル等を送受信
・インターネットのホームページから請求書や領収書のPDFファイル等をダウンロードor画面のスクリーンショットをした場合(アマゾン、ヤフオク、メルカリフリマ、クレカ利用明細、ネットバンキングの決済・入出金履歴、電気・ガス・電話会社等のお客様管理ページの請求書・領収書等、など)
・クラウドサービスの請求書・領収書等
・交通系ICカードなどキャッシュレス決済の利用明細データ等の受領
などなどです。
これらの、もともと紙ではなく電子データで受取るものが、保存義務の対象です。
これらは通常ホームページ等から閲覧できますが、一定の時間が経つと閲覧不可やダウンロード不可になるものが多くあります。短いものでは3ヶ月程度で閲覧不可になるようです。
よって、遅くなりすぎて電子データが保存できなかった!などということが無いように注意が必要です。都度保存or1ヶ月ごと保存などが望ましいと思われます。
どのように保存する?
保存するにあたり、原則ではいくつかの少しハードルが高い要件(検索要件など)が定められており、それらをクリアしなければ電子データを保存しているとは認められない、などとされていました。
しかし令和6年からの全員保存義務化に伴い、恒久的な(期限の無い)猶予措置なるものが創設され、結果、
①(高いハードルは無理な)相当の理由があり・・システム導入が資金的に困難、人手不足で対応が間に合わないなどでもOK
②電子取引データの出力書面を適切に管理保存しており
③税務調査等で求められたら、電子取引データをすぐ探し出して画面表示や提出ができること
これら①~③の要件を満たしていれば、電子取引データ保存として認められることとなりました。
つまり、これまで同様、出力書面を整理してファイルし、仮に「この出力書面の元データを見たい」と求められた時に、保存してあるデータの中から速やかに探し出して示すことができる程度に電子データを整理しておけばOKということです。
もとが電子データの取引については、出力した紙のみの保存はNGで、紙+電子データそのものの保存が必要になったということです。
いざという時に、求められた電子データを速やかに探し出すためには、電子取引データの量にもよりますが、たとえば保存するフォルダを階層構造にするなども一つの方法かもしれません。
誤解や誤ったCMも
“紙の証憑をすべてスキャナで電子化して保存しなければならなくなった”とか“スクショすれば紙は捨ててよい”とかの誤解や誤った情報も耳にします。
おそらくスキャナ保存と混乱していると思われますが、スキャナ保存は、単にスキャナ等でスキャンすれば認められるものではなく、タイムスタンプなるものが必須であるなど、別次元の話になります。
不安があれば相談を
よくわからないまま無駄な作業を行わないよう、不安や疑問があればまず税理士等へ相談することをお勧めします。