税理士

給与支払報告書と定額減税

2024.12月new!
年末調整後も煩雑

会社等では現在、年末調整関係書類の回収が完了しつつあり、計算準備中かと思われますが、年調減税(定額減税)を乗り切った後には、給与支払報告書(源泉徴収票)の作成が控えています。そして、これもまた年末調整と同じく定額減税の影響で、記載事項がさらに増え煩雑になっています。
給与支払報告書の提出期限は来月末(令和7年1月31日)ですが、従業員等へ同じ内容の「令和6年分給与所得の源泉徴収票」を交付するのは、それより早い時期(早ければ12月中)です。
年末調整関係事務一式を外部へ依頼するのでなく自社等で行う場合、給与計算ソフトを使用するとしても、記載事項等について概略を理解しておくと安心です。大まかにでも内容を知っていれば、ミスがあれば気付く事ができるかもしれません。また、従業員からの質問に迅速に対応できるというメリットもあります。
記載事項
定額減税絡みで「令和6年分給与所得の源泉徴収票」の(摘要)欄へ記載しなければならない事項は、以下の3点です。
①源泉徴収時所得税減税控除済額
日本語なのか?と思ってしまいますが、これは何かと言うと・・・
個人ごとに異なる、本人(従業員)の確定した“定額減税額”のうち、年末調整において年調所得税額(源泉徴収簿の㉔欄の金額)から実際に控除した年調減税額を記載します。年末調整で実現できた(控除することができた)減税額です。
控除済額はその人の今年の年調所得税額がMaxなので、定額減税額全額が引ききれるとは限りません。仮に住宅ローン控除額の影響で年調所得税額がゼロの場合はゼロからは何も引けないので「源泉徴収時所得税減税控除済額 0円」と記載することになります。
②控除外額
本人の定額減税額のうち、年末調整では控除しきれなかった金額(減税未完額)を記載します。
①+②=確定した定額減税額となります。年末調整で全額控除できた場合は「控除外額 0円」と記載します。反対に、上記住宅ローン控除額がある場合などは、定額減税額の全額が「控除外額×××円」となることもあります。
③非控除対象配偶者減税有
これもどこか他の国の言葉のようですが・・・・日本語です。
これは該当がある場合のみ記載します。
該当する場合とは、合計所得金額が1,000万円超の本人について、同一生計配偶者(所得48万円以下)を定額減税のカウントに入れた場合です。合計所得金額が1,000万円超の人には配偶者控除も配偶者特別控除も適用できませんが、定額減税は合計所得金額が1,000万円超であっても1,805万円以下ならできるため、このような変則的な名称が生まれています。

年末調整をしない場合
何らかの事情で年末調整未済の源泉徴収票を作成するときは、定額減税について摘要欄への記載は不要です。月次減税はしているかもしれませんが、それは源泉徴収票の源泉徴収税額に反映されており、そのままでOKです。そのままとは、毎月、月次減税額を控除して源泉徴収していた税額の合計額ということです。

あとは市町村で対応
定額減税すべき金額が、所得税額や住民税額(所得割)から引ききれない、つまり減税不足額が残ってしまう場合は、その差額を市町村が給付することとされています。
給付はすでに令和5年分の情報から見込みで仮計算され令和6年にも行われていますが、令和6年の実態が前年と変動しているなどの場合には、不足があれば追加給付がされることとなっています。
市町村への定額減税に係る正しい情報提供という意味でも、摘要欄への記載には注意が必要です。

令和6年分の年末調整 | 年調減税のツボ

2024.11月
定額減税の影響でさらに煩雑に
そろそろ従業員等へ、年末調整関係書類を、書き方案内等とともに配布する時期となりました。
今回の年末調整関係書類は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)、保険料控除申告書(マル保)、そして基礎控除兼配偶者控除等兼年末調整に係る定額減税兼所得金額調整控除申告書(基・配・所)です。
基・配・所は、タイトルに“定額減税”が加わって長くなり、記入欄にもあちこちに“定額減税”の文字が散らばっています。年末調整はもともと煩雑ですが、1回限りとはいえ、この定額減税の影響で、今回の年末調整はさらに煩雑になることが予想されます。
11月に入った今、初めての定額減税絡みの年末調整に向けて、年調減税の内容を大まかにでも把握しておけば、大きな不安なく年末の繁忙期を乗り切れるのではないでしょうか。
さて、年調減税(年末調整での定額減税)のツボは・・・
対象者は誰か
月次減税(6月以降の給与を通じての定額減税)の対象者は、6月1日現在勤務中の甲欄適用者全員(高額所得者含む)でしたが、年調減税の対象者は誰でしょうか?
答えは、年末調整の対象者のうち、令和6年分の合計所得(見込額)が1,805万円以下の人です。給与以外の収入(所得)もある場合は合算して判定するため、基・配・所の左側(基礎控除申告書)の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」を正しく記入してもらい、まずは年調減税の対象者かを確認する必要があります。
年末調整対象者ではあるが、年調減税(定額減税)対象者ではない、というパターンもありえます。
配偶者
基・配・所の中央あたりの「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」を正しく記入してもらい、合計所得が48万円超の場合には、年調減税においては人数にカウントできません(配偶者分の3万円は控除できない)。
所得の確認自体はいつもの年末調整準備と同じ作業ではありますが、6月現在で見積もっていた所得と同額とは限らないことが年調減税額にダイレクトに影響してくるため、「所得」の理解が正しいかなどについてのサポートが、例年以上に大切と思われます。
扶養親族
マル扶(令和6年分)の「控除対象扶養親族」だけでなく、下部に記入してある「16歳未満の扶養親族」(いわゆる年少扶養親族)も、定額減税においてはカウントします。
見落とさないよう注意が必要です。
なお、月次減税スタートの6月の現況からの異動(子が生まれるなど)がないかにも注意が必要です(月次減税は開始後6~12月の異動は無視だが、年調減税ではたとえば生まれた子があればカウントに加えるなどのため)。
個別相談を
用紙への記入方法は例年以上にややこしく、一般の従業員等にはハードルが高いと思われます。また、定額減税と扶養控除の対象者の不一致は認められないなど、ケースによっては慎重に判断すべき内容もあります。
個別の疑問が生じた時には、税理士等へ相談するとよいでしょう。

個人事業者の納税スケジュール

2024.10月
確定申告して終わりではない
サラリーマンであれば、所得(給与所得)に対する税金(所得税・住民税)は、源泉徴収(給与から天引き)や年末調整を通して原則すべて会社等がやってくれますが、たとえば独立して個人事業者になると、申告・納税とも自分で行わなければなりません。
支払う税金の種類も、所得税・住民税だけでは済まず、事業税消費税も発生する場合があります。これらの税金は、それぞれ計算方法が異なります。また、支払期限もバラバラです。確定申告してホッとしていると、忘れた頃に納付書が来て驚くことも・・。
個人事業者で、年間にある程度の利益が出そうな時は、納税スケジュール(概算額と納付月)を把握しておくと安心です。

概算のしかた
事例をもとに、令和6年分の事業にかかる各種税金の計算方法を見てみましょう(概算)。
〔前提〕個人事業者(事業所得以外の所得は無し)
            飲食店業
            消費税はインボイス登録済
            年間売上高(予測)                            税込1,100万円・・①
            事業所得(青色申告特別控除65万円控除後 ) 500万円・・②
            課税所得                                                    400万円・・③
この場合の税額を概算すると・・・
所得税:③×20%―427,500円=372,500円≒38万円(税率は超過累進税率)
住民税:③×10%=40万円
事業税:(②+青色申告特別控除65万円―事業主控除290万円)×5%=137,500円≒14万円
消費税:①×100/110×10%×2割=20万円(2割特例適用とする)
納税スケジュール
では、それぞれの税金を、いつまでにいくら納付しなければならないのでしょうか?
事例の場合の納税スケジュールは次のようになります。
納税スケジュール
他の税金等
上記は事業所得から計算される税金ですが、他にも人により固定資産税・自動車税や、従業員がいれば源泉所得税・特別徴収住民税の納付が必要なこともあります。
また、税金以外にも国保料国民年金の支払も定期的に発生すると思われます。
わかる範囲で納税スケジュールに加えて、資金準備をしておくと良いでしょう。

ふるさと納税と定額減税

2024.9月
今年も残り4ヶ月
令和6年もすでに3分の2が経過しました。
残り4ヶ月となった今は、そろそろふるさと納税枠を意識する時期かもしれません。
現在、定額減税により所得税・住民税が軽減されていますが、さてこの定額減税は、いわゆる「ふるさと納税枠」へ影響するのでしょうか?
レアケースを除き影響しない
定額減税は原則、令和6年分のふるさと納税枠(2,000円のみの負担で寄附とほぼ同額の節税ができる上限額)には影響しません。
なぜなら、所得税については、定額減税は納付税額の軽減or給付として実現するもので、税額計算とは別のものだからです。
そして住民税については、定額減税は令和6年度分住民税(令和5年分の所得に対するもの)からの控除として、現在行われているところです。
定額減税は1年限りなので、今年(令和6年)の寄附枠の計算のもととなる令和7年度分住民税(令和6年分の所得に対するもの)が定額減税によって減ることは原則ありません(もう減税は前年度に終了している)。
枠を計算するもととなる住民税が減らないのであれば、枠も減らないという訳です。
去年(令和5年)の寄附については、寄附者に不利益がないよう地方税法の改正があり、ふるさと納税枠と定額減税の取扱いについて特例が設けられていました。
今年(令和6年)の寄附については、その特例はありませんが、そもそも定額減税の影響がレアケースを除きありえないので特例を設ける必要もなく、結果、今後のふるさと納税枠には定額減税は影響しないこととなります。
レアケースとは
本人の合計所得金額が1,000万円超で配偶者の合計所得金額が48万円以下の者(控除対象配偶者以外の同一生計配偶者)については、配偶者分の住民税の定額減税1万円は令和7年度分の住民税から控除されることとなっています。
このケースでは少しだけ、ふるさと納税枠へ定額減税の影響が生じることとなります。該当者が“枠ギリギリまで寄附したい”場合は、4千円程度ひかえめにするとよいかもしれません。

高額所得者も影響なし
合計所得金額1,805万円超(給与収入2,000万円超など)の高額所得者は、所得制限により定額減税制度の対象外です。
給与所得者であれば、現在は毎月の給与において定額減税がされているはずですが、最終的には対象外(所得税・住民税とも定額減税なし)となります。
よって、高額所得者がふるさと納税枠を計算する時、定額減税の影響はそもそも考慮不要です。
ふるさと納税サイトで概算枠がわかる
自分のふるさと納税枠(寄附すべき上限額)を知りたいとき、以前はサイト内にはサラリーマン(給与所得者)向けの簡易なシミュレーションしか見かけなかったように思いますが、現在ではサイトによっては個人事業者向けのシミュレーションも準備されていたりします。
令和5年と6年の収入等に大きな変動が無いことが前提ですが、令和5年分の給与所得の源泉徴収票や所得税の確定申告書(控)が手元に保管してあれば、それを見ながら入力して概算枠を出せるように丁寧な説明もついているなど、実用に耐えるものも見られます。

少額飲食費の基準が1万円へ倍増

2024.8月
法人の交際費損金算入額には上限がある
個人事業者であれば、ある支出がいわゆる経費になるかならないかのラインは、事業に関係しているか・事業のために必要か、ということです。
そして交際費についても問題になるのは内容であり、金額上限などはありません。

これが法人になると、交際費について、損金算入額(税金計算上も認められる金額)には一定の上限が決められています。上限はいくつかありますが、資本金1億円以下の法人の場合、原則、年800万円が一つの上限です(定額控除限度額)。
上限を超えて交際費を支出した場合、超えた分については税金計算上のメリットはありません(接待交際にそれ以上お金を使っても税金は1円も安くならない)。
少額飲食費は交際費からはずせる
たとえば資本金1億円の法人は、交際費が年800万円以下なら全額損金算入できるので、「交際費に年800万円!?そんなに使わないよ」という法人であれば、べつに・・・という話ではありますが、超えそうな場合、“内容は交際費なのだが、要件を満たす少額飲食費であれば交際費としてカウントしない”という規定があります。
交際費のカウントからはずすためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
社外の人との飲食であること、通常の証憑管理に加え参加者等を記録し保管すること、一人当たりの金額が一定額以下であること等です。
改正されたのは一人当たりの金額
少額飲食費を交際費から除外するという規定はこれまでもありましたが期限を迎えようとしていたところ、令和6年度税制改正で適用期限が3年間延長されるとともに、いくつかある要件のうち「一人当たりの金額」が5千円から1万円へ引き上げられました(倍増)。
少し注意が必要なのは、改正は令和6年4月以降に支出した飲食費に適用されるので、それより前の飲食については従前の5千円基準が適用されるという事です。
たとえば令和6年3月に社外の人を飲食接待したとして、支出額を参加者人数で割って1万円だったならば、交際費からは除外できない(交際費としてカウントしなければならない)という事です。
実務上の金額判定は煩雑
5千円とか1万円とかは税込なのか税抜なのか?
と言うと、それはその法人の経理方法によります。
税込処理をしている法人であれば税込金額を人数で割り、税抜処理をしている法人であれば税抜金額を人数で割ることとなります。

ところで令和5年10月からのインボイス導入により、税抜処理の場合は金額判定が煩雑になっています。すべてがインボイスであれば問題ないのですが、そうでなく経過措置の仮払消費税80%控除などの場合には、控除できない20%等の消費税を本体価額に加算して一人当たりの飲食費が基準(5千円or1万円)以下かを判定しなければならないからです。

さらに、消費税率はほぼ10%かと思われますが、内容によっては軽減税率8%のこともあるかもしれません(取引先イベントへの差入弁当など)。
疑問は随時解決しながら正しい処理を
定額控除限度額(年800万円)を超えそうな場合、少額飲食費の除外ができれば税務上のメリットがあります。
上記のとおり、実務はかなり煩雑なので事務負担増の程度も考慮すべきかもしれずケースバイケースですが
・自社は税込処理なのか税抜処理なのか
・消費税率は10%か軽減8%か
・領収書等はインボイスなのかそうでないのか、その取扱いは(経過措置等)
などを理解した上で処理することが求められます。
面倒なので後でまとめて・・は困難(と言うかほぼ不可能)と思われます。
疑問点は随時税理士等へ質問・相談しながら方針を決め、対応するのがよいでしょう。

源泉税の納付と定額減税

2024.7月
給与・報酬の源泉税納付期限は7月10日
会社等が従業員等の給与などから源泉徴収(天引き)した所得税は、原則、翌月10日までに税務署へ納付することとされています。
ただし従業員数が少ない間は、納期の特例の届出をすれば、半年に一度の納付(1~6月分を7月に納付など)でよいこととなっています。
どちらにせよ、今月(7月)10日は納付期限です。
そして今回は、定額減税(6月スタート)後、初めての納付となります。
納付書の書き方
今回、微妙に迷ってしまうのが、納付書の一行目(給料等)・二行目(賞与)の右端の税額欄かもしれません。
もともとの税額を書くのか?or減税後の税額(たとえばゼロなど)を書くのか?
答えは「減税後の税額を書く」です。
年調超過額の残に注意
毎月納付の会社等では、もう残っていないかもしれませんが、納期の特例により今年初めての源泉税納付をする会社等は、定額減税に気を取られて、前年から繰越されている年調超過額の精算を失念しないよう注意が必要です。
ゼロでも提出
定額減税の影響などで、仮に納付すべき税額がなかった(ゼロ)としても、申告(と言うか、そのゼロ納付の納付書の提出)は必須です。
提出しないと、税務署には、税額がゼロなのかどうかも分からないためです。

定額減税スタート

2024.6月
令和6年6月の給与計算から定額減税スタート
所得税3万円/人、住民税1万円/人の定額減税。
住民税については市町村が計算を行うため、会社等の給与計算担当者は、所得税の源泉徴収税額を調整・管理することになります。
会社等では、おそらくすでに、対象となる従業員はだれかを把握し、その本人を通じて定額減税すべき配偶者・扶養親族の人数をカウントし、各従業員ごとの定額減税額まで算出済みかと思います。
さて今後は、各従業員ごとに異なる定額減税額に達するまで源泉徴収をストップしておくわけですが、その管理は煩雑です。
理由は、1回の支給(たとえば6月支給の給与or賞与)だけで定額減税が完了する、などということはレアケース(よほど給与or賞与が高額なケースのみ)だと考えられるからです。
何ヶ月にもわたって、場合によっては今年の最終給与・賞与あたりまで、管理を続けなければならないケースも想定されます。
各人別控除事績簿
給与計算ソフトやシステムで、すでに管理まで可能な状況であれば問題ありませんが、そうでない場合は、何らかの方法でこの煩雑な作業をクリアしなければなりません。
一案として、国税庁ホームページの「各人別控除事績簿」(エクセルシート)をダウンロードして使うという方法もあります。様式・記載例のページにPDFとExcelが用意されています。
自分でもチャチャっと作れそうな単純なものですが、一から作るよりは早いかもしれません。
月数も、6月~12月給与+賞与2回分と思われる9ヶ月分が準備されています・・・・。
調整給付金
皆が皆、給与・賞与を通じて定額減税をMaxまで受けられるとは限りません。
今回のやり方では、本人の所得税額以上の減税はできないからです(住民税も同じ)。
それを見越して、本人の税額(所得税・住民税)が定額減税額より少ないであろう人を対象に、調整給付金なるものが支給されることとなっています。
担当は市町村です。
詳細は順次公開されると思われますが、該当者には何らかの案内がされ、申請→給付となるようです。
従業員等から「自分は税額が少なくて定額減税しきれないと思うが、差額(不足額)はどうなるのか?」と質問されたら、別途、給付がある旨を伝えてあげるとよいでしょう。

令和6年分の記帳と証憑管理

2024.5月
令和5年分までと同じで大丈夫?
令和6年もすでに4ヶ月経過しました。
現在はクラウド会計も普及しており、預金取引やカード払いについては、入力不要でサクッと連携取込して処理している方も多いかと思います。
ところで、令和5年10月1日からインボイス制度が開始し、さらに令和6年1月1日からは電子帳簿保存法のうち電子取引データ保存制度がすべての事業者に義務付けられました。
よって、今年からの記帳(会計ソフトへの入力など)や証憑管理(請求書・領収書等の保管方法など)は、去年までと同じというワケにはいかない部分があります。
具体的には、消費税申告を行う事業者であれば、原則、インボイスを意識した記帳をすることとなります。また、すべての事業者は、電子取引があれば、その電子取引データの保存をしなければなりません。
記帳におけるインボイスへの対応
実務において、記帳(入力等)する時に必須の支払関係証憑(請求書・領収書等)。
インボイス制度が開始されたので、すべての支払について、インボイスか否か(登録番号の記載があるか無いか)チェックしなければならないのでしょうか?
そんなことはありません。
理由は、いくつかの特例などがあるからです。たとえば・・・
少額特例
「税込1万円未満の支払については、インボイス無しで仕入税額控除OK」という特例です。
よって、金額が1万円未満ならインボイスかどうかのチェックは不要です。
会計ソフト入力時は、インボイスでない証憑でも「適格」等とメニューで選択するなどして計算に反映させます。
基準期間(個人事業者なら2年前)の課税売上高が1億円超の事業者は使えない場合がある事と、令和11年9月30日までの時限措置であることに注意が必要です。
公共交通機関特例
税込3万円未満の公共交通機関(船、バス、鉄道)の運賃はインボイス無しで仕入税額控除OK」という特例です。摘要欄へ「公共交通機関特例」等と入力が必要です。
この他にも自動販売機特例、郵便局特例などいくつかの特例があります。少額特例が使えないケースで該当があれば、使う機会があるかもしれません。
③8割(5割)控除の経過措置
①・②の特例が使えなければ、受取った証憑がインボイスなのか否かをチェックする必要があります。
けれどもインボイスでなければ全く仕入税額控除できないかというと、いきなりそのような事にはならず、当面3年間は8割は仕入税額控除OKなので、会計ソフト入力時は、インボイスでない証憑は「区分記載」等とメニューで選択するなどしてインボイスとは分けて管理することとなります(その後3年間は5割控除)。
国税庁ホームページのYouTube
わかりやすいかは人それぞれかもしれませんが“3分でわかるインボイス”で検索すると、「3分でわかるインボイスETC対応」「3分でわかるインボイス立替金精算」「3分でわかる銀行振込手数料のインボイス対応」などのYouTube動画が見られます。

電子取引データの保存義務
事業者が請求書や領収書等を電子メール添付のPDFファイルで送受信したり、インターネットのホームページから、たとえばクレジットカード利用明細書PDFファイルをダウンロードして入手するなど、そもそも紙ではなく電子データで受取るものがあれば、それは電子取引であり、すべての事業者はそのデータを各自保存しておかなければなりません。
詳細は2ヶ月前(2024.3月)の税理士ブログ「電子帳簿保存法と電子取引データの保存義務」をご覧ください。

インボイスは逃げ道もあるが2割特例は期限あり
事業者の過去の売上高などによっては逃げられないケースもありますが“インボイス登録しなければずっと免税事業者だった”などの場合には2割特例が使えたり、2割特例が使えなくても期限内に簡易課税選択届を出すことで簡易課税での計算ができる場合があります。
ただし2割特例は令和8年分までの特例です(令和9年分以降は使えない)。
ケースバイケースなので個別相談を
売上規模や業態などによっては、インボイスに苦しまなくてもよいケースも想定されます。
「よくわからないままインボイス登録したが不要だった・・」ならば、すぐというワケにはいきませんが、やめることもできます。
また「明らかに簡易課税が有利」で選択可能な売上規模であれば、選択届出書を提出することで経費のインボイス管理から解放されます。
ただし消費税の届出やインボイスは複雑なので、本当にそうなのか(不要なのかや有利なのか等)の判断は、自分だけで行うのではなく、複数の相談先(税理士等)へ個別相談することをお勧めします。

定額減税のツボ

2024.4月
令和6年6月支給分から給与計算実務に影響
令和6年度税制改正により、居住者(日本に居住等の人)に対して一人4万円(所得税3万円、住民税1万円)の定額減税がされることとなりました。
給与所得者(従業員等)の定額減税は、本人分だけでなく要件を満たす配偶者や扶養親族分についても、本人の給与を通じて行うこととなります。
つまり給与計算の事務負担が増大するということです。
一体どのようなしくみになっているのでしょうか?
住民税の定額減税計算は市町村担当
住民税については、市町村において計算されます。
よって会社等は、届いた特別徴収税額通知書の金額(定額減税織り込み済)を各月に天引徴収し、翌月納付するだけです(従前どおり)。
所得税の定額減税は給与計算で
所得税の定額減税実務は煩雑です。
理由は、“ポンと給付”なら一度でスッキリ完了するものを、給与所得者(従業員等)については令和6年分給与の源泉徴収税額を調整(各従業員によって異なる定額減税額に達するまでは源泉徴収をストップ)することで減税を実現させるしくみだからです。
何てややこしい・・・しかし残念ながら選択制ではないため、会社等としては対応せざるをえません。
知っておくべきポイント
経理・給与計算担当者が実務にあたるとき、ツボがわかっていれば少しだけ負担が減るかもしれません。
主なポイントは、対象者はだれか(どの従業員等か)、源泉控除対象配偶者と同一生計配偶者の違い、カウントする扶養親族の範囲あたりかと思われます。
対象従業員(本人)
給与を通じて減税すべき人は、従業員全員ではありません。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(いわゆるマル扶)を提出していて、令和6年6月1日に在職(勤務)している人についてだけ、給与計算において源泉徴収税額を調整していくことととされています。
つまり乙欄・丙欄適用者は関係なく、また5月末までに退職した人や6月2日以降に入社した人も関係ありません(源泉徴収税額の調整不要)。
同一生計配偶者
マル扶の源泉控除対象配偶者欄に記入があっても、その全員がカウントされる配偶者とは限らないので注意が必要です。
「令和6年中の所得の見積額」欄をチェックし、48万円超(給与収入のみならいわゆる103万円超)であれば、定額減税においては人数にカウントできません。
「所得」の理解がアヤシイ時などは、必要に応じて本人へ再確認しておくと安心です。
扶養親族
マル扶の「控除対象扶養親族」だけでなく、下部に記入してある「16歳未満の扶養親族」(いわゆる年少扶養親族)も、定額減税においてはカウントします。
見落とさないよう注意が必要です。
高額所得者の場合
本人が、たとえば役員などで給与収入2,000万円超の場合、年末調整はしませんが、給与を通じての定額減税は行うこととされています。最終的には本人の所得制限により定額減税制度の対象外(減税なし)となるのですが、カウントすべき扶養親族分は、本人の給与を通じていったん定額減税が実現されます。

この場合、高額所得者の配偶者ゆえにマル扶へ配偶者の記載がされておらず、カウント漏れになるケースが想定されます。
このままでも給与収入2,000万円以下なら最終的には本人の年末調整において控除できるため支障はありませんが、配偶者の所得が48万円以下であれば、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」なるものを事前に(5月末までくらいに)提出してもらえば配偶者分の定額減税を給与計算で行うことができるので、案内してあげると喜ばれるかもしれません。

電子帳簿保存法と電子取引データの保存義務 

2024.3月
令和6年1月1日から電子取引データ保存義務化
令和6年に入ってからすでに2ヶ月超経過していますが、“電子帳簿保存法(電帳法)”“電子取引データ保存義務化”“スキャナ保存?”などの言葉が飛び交い、結局、何をしなければならないのか・・・?悩んでいる個人事業者or会社等の経理担当者も多いのではないでしょうか。

一体何が義務化されたのか?そして、全ての事業者が対応しなければならないことは何なのでしょうか?
一言でいうと『事業者は事業規模等にかかわらず、令和6年1月1日以降に電子取引を行なったならば、その電子データそのものを保存しておかなければならなくなった』ということです。

では、最近よく聞く“電帳法”と“電子取引データの保存義務”の位置関係はどうなっているのでしょうか。

電帳法には3つある
電子帳簿保存法(電帳法)と言った場合、その内容には3つの区分があります。
1.以前からある電子帳簿等(帳簿・書類)保存制度
・・・帳簿(元帳・仕訳帳など)・書類(B/S・P/Lなど)を紙でなく電子データで保存する
2.スキャナ保存制度
・・・紙原本の書類(領収書・契約書など)を画像データで保存する
3.電子取引データ保存制度
・・・注文書・契約書・請求書・領収書等を電子データでやり取りしたら電子データを保存する

1と2は、以前に比べると要件が緩和されたと言われていますが、細かい要件を満たさなければ認められず、現実には高額なシステムを導入等しなければ困難と思われます。
そして1と2は義務ではなく選択適用(任意)です。

今回義務化されたのは3で、これは3区分ある電帳法の1つです。

保存すべき電子取引とは?
ではそもそも電子取引って何を指すのでしょうか?
電子取引とは、たとえば
・電子メールで請求書や領収書等のPDFファイル等を送受信
・インターネットのホームページから請求書や領収書のPDFファイル等をダウンロードor画面のスクリーンショットをした場合(アマゾン、ヤフオク、メルカリフリマ、クレカ利用明細、ネットバンキングの決済・入出金履歴、電気・ガス・電話会社等のお客様管理ページの請求書・領収書等、など)
・クラウドサービスの請求書・領収書等
・交通系ICカードなどキャッシュレス決済の利用明細データ等の受領
などなどです。
これらの、もともと紙ではなく電子データで受取るものが、保存義務の対象です。

これらは通常ホームページ等から閲覧できますが、一定の時間が経つと閲覧不可やダウンロード不可になるものが多くあります。短いものでは3ヶ月程度で閲覧不可になるようです。
よって、遅くなりすぎて電子データが保存できなかった!などということが無いように注意が必要です。都度保存or1ヶ月ごと保存などが望ましいと思われます。


どのように保存する?
保存するにあたり、原則ではいくつかの少しハードルが高い要件(検索要件など)が定められており、それらをクリアしなければ電子データを保存しているとは認められない、などとされていました。

しかし令和6年からの全員保存義務化に伴い、恒久的な(期限の無い)猶予措置なるものが創設され、結果、
①(高いハードルは無理な)相当の理由があり・・システム導入が資金的に困難、人手不足で対応が間に合わないなどでもOK
②電子取引データの出力書面を適切に管理保存しており
税務調査等で求められたら、電子取引データをすぐ探し出して画面表示や提出ができること
これら①~③の要件を満たしていれば、電子取引データ保存として認められることとなりました。

つまり、これまで同様、出力書面を整理してファイルし、仮に「この出力書面の元データを見たい」と求められた時に、保存してあるデータの中から速やかに探し出して示すことができる程度に電子データを整理しておけばOKということです。
もとが電子データの取引については、出力した紙のみの保存はNGで、紙+電子データそのものの保存が必要になったということです。

いざという時に、求められた電子データを速やかに探し出すためには、電子取引データの量にもよりますが、たとえば保存するフォルダを階層構造にするなども一つの方法かもしれません。

誤解や誤ったCMも
“紙の証憑をすべてスキャナで電子化して保存しなければならなくなった”とか“スクショすれば紙は捨ててよい”とかの誤解や誤った情報も耳にします。
おそらくスキャナ保存と混乱していると思われますが、スキャナ保存は、単にスキャナ等でスキャンすれば認められるものではなく、タイムスタンプなるものが必須であるなど、別次元の話になります。

不安があれば相談を
よくわからないまま無駄な作業を行わないよう、不安や疑問があればまず税理士等へ相談することをお勧めします。

初めての消費税申告

2024.2月
インボイスのために登録したとき
「年間売上1,000万円なんて全然いかないが、取引先との関係上の理由などでやむなく今回(令和5年10月1日から)インボイス登録した」という個人事業者にとって、今回(令和5年分)が初めての消費税申告です。
これまでは所得税の申告だけしていればよかったが、令和5年分の確定申告からは、消費税の申告もしなければなりません。
「消費税の申告って・・・・?」と不安な方も多いのではないでしょうか。

今回は3ヶ月分だけの消費税
これまで全く消費税に縁が無く、税務署へ消費税関係の届出などもしていない個人事業者が、令和5年10月1日からインボイス登録しているとします。
その場合、今回の消費税申告では、令和5年10月分から12月分の売上や経費を集計し、そのうち消費税に関係するものだけを対象として計算し、納付する消費税額を出します。

2割特例とは
経費については、所得税計算では経費にならないものと言うと「プライベートな支出などかな?」と頭に浮かぶかもしれません。
所得税ではそれは正しいのですが、消費税計算では、所得税のたとえば青色申告決算書で経費の欄へ金額が入っていたとしても、それらがすべて経費分として引ける訳ではありません。
消費税法で決められた、引けるものだけ引ける(たとえば給料賃金や租税公課、減価償却費などは引けない)ことになります。
この経費は引けるのか?をいちいち考えなければならず、煩雑です。
その事務負担を減らすべく、インボイス絡みの緩和措置もありますが、それに該当するかチェックするのもまた煩雑です。
そこで準備されたのが2割特例です。
使えるのは令和8年分までという期限付きの特例ではありますが「初めての消費税申告に、経費まで考えるのは無理」という場合、経費はスルーして、売上だけから、その預り消費税の2割を納付するならその申告でOKとしたものです。

2割特例のポイント
「10月~12月の3ヶ月の売上を合計したらいいだけか!簡単~」と思ったアナタ。
一応、チェックすべきポイントがあります。
それは、現在どのような管理をしているかによらず(手書きでも会計ソフト入力していても)その合計額が本当に10月~12月分の売上なのか?の確認です。
入金ベース(入金日に売上計上、通常は決算まではこれが多い)や請求ベース(売上先へ請求書を出した日に売上計上)でなく、“令和5年10月1日~12月31日にして終わった仕事”の金額を売上として計算しなければなりません。
何が言いたいかというと、「その期間に仕事はして終わったが“まだお金をもらっていなかったから”とか“まだ請求書を出していなかったから”売上にカウントしなくていいよね?」というのはNGで、入金がなくても、請求書を出していなくても、売上とすべきものは売上としてカウントしなければならないという事です。
また逆に、10月に入金している売上が9月にした仕事分であれば、集計しないよう注意が必要です(集計すると多すぎる)。

売上とすべきものとは
では、仕事をして終わる、って何?かですが、物品販売等ならその物品を引き渡すこと、請負業なら請負った仕事を完了すること(完成品があるならそれを引き渡すこと)、役務提供サービスなら役務完了することで、その日に売上計上すべきとされています。
役務完了引渡基準などと言ったりします。

詳細で悩んだら相談を
10月~12月に多額な経費があったなど、「2割特例でいいのかな?」と悩んだ時は、税理士に相談するとよいでしょう。

給与支払報告書の提出

2024.1月
給与支払報告書の提出期限は令和6年1月31日(水)

会社等(法人or個人事業者等)は、令和5年中(1月1日から12月31日)に従業員等へ支払った給与等について、従業員の令和6年1月1日現在の居住地の市町村へ、給与支払報告書(源泉徴収票)を提出しなければなりません。
提出期限は令和6年1月31日(水)です。
提出しなかったり、虚偽記載をしたりすると、ペナルティがあります。
ペナルティは1年以下の懲役or50万円以下の罰金です。

特別徴収or普通徴収
市町村では、提出された給与支払報告書をもとに、各従業員の令和5年分の住民税を計算し、5月中旬に、原則「令和6年度給与所得等に係る市民税・県民税特別徴収税額の決定通知書」なるものを会社等へ送付してきます。
会社等では、それに記載された各従業員の住民税(市県民税)額を、各人の令和6年6月分~令和7年5月分の給与から天引き(特別徴収)します。
徴収した住民税は、原則、翌月10日までに銀行等で各市町村へ納付しなければなりません。

ただし、今回の令和6年度(令和5年分)給与支払報告書提出の際に、各種事情により普通徴収とする旨(松山市の場合は普A~普D)を該当する従業員の給与支払報告書の摘要欄へ記入していた場合は、当社において特別徴収する必要はなく、本人宛に住民税の納付書が送られ、各自が年4回に分けて納付する等の対応となります。



普通徴収にするかの検討
各種事情とは、特別徴収(天引き)が無理な理由で、退職者や乙欄適用者であれば当然とも言え悩む余地はないと思われますが、それ以外の“給与が不定期”“給与が少額で引ききれない”については検討が少し煩雑かもしれません。

なぜなら、将来(令和6年支給)の給与についての話であり、金額や支払サイトが令和5年の給与と同じとは限らないためです。変化が予定されているならば、令和6年がどうかにより、特別徴収でよいか、そうではなく普Aor普B等と記載し普通徴収を選ぶかを決める必要があります。



地方税法上の提出免除者
市町村へ提出する給与支払報告書は、同じ給与についての報告であっても、税務署への源泉徴収票提出義務(年収500万円超の者など限定的)とは異なり、原則、給与等を支払った全員について提出することとされています。
ただし例外があり、その年(今回なら令和5年)中に退職した者で、給与総額が30万円以下の者は、提出しなくてよいとされています(地方税法第317条の6)。



提出先は従業員の居住する市町村
会社等の所在する市町村と従業員の居住市町村が一致しているとは限りません。他の市町村居住者へ給与を支払っていれば、それぞれの市町村宛てに給与支払報告書を提出することとなります。

まれに学生アルバイトなどで、住民票は他県の実家にある、などというケースがあります。その場合も、令和6年1月1日現在、実際に住んでいる市町村への提出となります。
居住地で各種行政サービスを受けている対価を税金で支払う、と考えれば提出先を迷わないかもしれません。

定額減税
令和6年度税制改正大綱において、令和6年度の特別徴収は、定額減税(本人及び扶養親族等1人につき1万円)により、初回6月分は天引きゼロとし、令和6年7月分~令和7年5月分の11回の給与から、減税後の住民税年額の1/11ずつを徴収する予定とされています。

甲・乙・丙欄と年末調整

2023.12月
年末調整できる?できない?
今年も年末調整を行う月、12月となりました。
会社等では従業員等のうち年末調整対象者へ用紙を配付し、必要書類を添付しての提出期限を11月末頃としていたのではないでしょうか。
年末調整対象者とは、ざっくり言うと、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)を提出している人(当社がメインの勤務先である甲欄適用者)で、高額給与(2,000万円超)をもらっているヒト以外の人です。
時々、対象者が「ワタシは自分で確定申告するので年末調整はしないで下さい」と言ってくることがあるようですが、そのような選択は想定されておらず、確定申告するとしても、対象者であればいったんは年末調整で年税額の精算をすることとされています。
ただし実務では、対象者=年末調整する人(というかできる人)ではありません。
対象者にも、できる人とできない人があります。
どういうことでしょうか?

対象者なのに年末調整できない?
さて“年末調整対象者(年末調整すべき従業員)であっても、コレが無ければ年末調整できない”というものがあります。一体何でしょうか?
それは、いわゆる前職(甲欄)がある人(転職してきた人)の前職分の源泉徴収票です。
なぜなら、前職分の源泉徴収票が無ければ、年末調整をするために必要な給与収入(今年1月1日から12月31日までの主たる給与の合算額。前職分+当社分)が計算できないため、年末調整したくても、そもそもそのスタート地点に立てないからです。
他の添付書類(生命保険料控除証明書やイデコの掛金証明書など)は、あれば年末調整で控除ができる(来年、本人が確定申告する時に控除するのも自由)というものなので、提出漏れがあっても、それにより年末調整ができなくなる、などという事は起こりません。

多様な働き方と源泉徴収区分(甲・乙・丙欄)
昨今は、雇用されて働く場合でも、単発or短期のアルバイト、掛け持ちのパート、週末だけ副業など、さまざまな働き方があり、源泉徴収のされ方(甲・乙・丙欄どれが適用されるか)も複雑です。
従業員一人について見ても、例えば当社に入社した当初は短期のバイトで丙欄適用者だったが、もう少し続けてもらうことになり、その時点では別の会社がメインの勤務先だったため乙欄を適用していた、その後、別の会社よりも当社の方がメインになったので甲欄を適用することとなり年末に至る、などという事もあるかもしれません。
例えばこの人の場合、マル扶提出済みのはずなので年末調整対象者になりますが、さて、年末調整において合算すべき給与は何か?わかるでしょうか。
答えは“当社から支給した給与すべて(丙・乙・甲)と、別の会社がメインだった時点までの、別の会社から支給された給与”です。
乙欄や丙欄の給与は年末調整しない、というのは、「その後に甲欄の給与が絡まないのであれば」という条件付きだと考えれば、処理を誤らないように思います。


実務では前職の源泉徴収票どおりに処理
実務においては、中途入社の人に、まずは前職の有無を確認し、前職があれば源泉徴収票を入手し、その表記に従って処理する手順になるでしょう。
もし前職(甲欄)の源泉徴収票が入手できなければ、そして何か他の証憑(給与明細など給与総額と源泉徴収税額等が確認できるもの)もなければ、残念ながら、年末調整すべきだができない人となり、年末調整未済の源泉徴収票を交付せざるをえないこととなります。

令和5年分の年末調整

2023.11月
税制改正の影響は限定的

そろそろ従業員等へ年末調整関係書類(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)、保険料控除申告書(マル保)、基礎控除兼配偶者控除等兼所得金額調整控除申告書(基・配・所))を書き方案内等とともに配布する時期となりました。
今回(令和5年分)の年末調整は、税制改正により前年までと変わる部分はありますが、改正の対象は限定的で、従業員等の全員に関係するようなものではありません。
けれども経理担当者等としては、該当者がいれば対応&チェックをしなければなりません。また、目新しい記入欄について質問を受けることがあるかもしれません。
改正内容を大まかにでも把握しておけば、年末の繁忙期に向けて余裕を持って業務にあたる事が出来るのではないでしょうか。

改正内容
改正により今回(令和5年分)の年末調整で初めて目にする内容として、以下の2つが挙げられます。2つとも給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(いわゆるマル扶)の項目です。

①非居住者である扶養親族の制限
前回(令和4年分)までは無かった、非居住者である親族についての4区分のチェックボックスがあり、該当者がいる場合には、いずれかにチェックを入れるようになっています。
改正って何か?というと『前回までは扶養に入れている親族が非居住者(海外に住んでいる等)の場合、親族であることの証明(戸籍等)と扶養していることの証明(送金履歴等)を示せば、日本での所得が48万円以下なら年齢にかかわらず扶養控除OKだったが、国外所得はフリーパス!というのもバランスが悪く問題とされたため、ちょっと厳しくします』というものです。
よってそもそも扶養に入れている親族が皆日本に住んでいれば、全く関係のない改正です。
「いや、自分には関係ある」という人の場合、ちょっと厳しくって何か?というと『その親族が働き盛りの年齢層(30才~69才)の場合は原則NG、ただし30才~69才であっても事情によってはOK』となりました。
そしてそのOKとなる事情は、チェックボックスの“留学or障害者or年38万円以上の生活費等送金”のいずれかに限定されています。
またチェックボックスにチェックを入れて扶養親族とする場合には、その事情を証明する書類等(ビザや年38万円以上の送金履歴等)も追加で必要になります。

②退職手当のある配偶者等の記載欄が追加
マル扶の一番下“住民税に関する事項”に新しい記載欄が追加されました。
まず、ここへは誰を記入するのか?というと『退職所得があったがために所得オーバーしてしまい、マル扶や基・配・所へは氏名を記入できない(扶養・配偶者控除等がNG)こととなった人』です。『退職所得を含めなければ、配偶者なら所得133万円以下、扶養親族なら所得48万円以下の人』ということです。
NGなのになぜ記入するのか?というと、NGなのは所得税の話で、住民税では退職所得は無視なので控除可能(というか控除すべき)だからです。
前回(令和4年分)までは、該当者は年末調整後、個別に住民税の申告をして控除を受けるしかなく、適用漏れが散見されたため、年末調整で対応するべく改正が行われたようです。
これも、そもそも従業員等の配偶者や扶養親族に退職所得がなければ、全く関係のない改正です。

改正以外もやはり煩雑な年末調整
マル扶、マル保、基・配・所への記入は、一般の従業員等にはかなりハードルが高いと思われます。
ですが、経理担当者等がすべてを説明しようとしても無理があります。
マイナポータル経由で・・・といってもまだ実務でサクサク使えるレベルには達していないようです。
個別の疑問が生じたら、税理士等へ相談するのが効率的かもしれません。

インボイス制度スタート

2023.10月
インボイス登録した事業者と様子見の事業者
今月(令和5年10月)から、消費税のインボイス制度がスタートしました。今回、消費税の課税事業者の9割、免税事業者の2割程度がインボイス登録を済ませたと報道されています。
免税事業者にとっては、インボイス登録するかの判断には、まず消費税のしくみを理解しなければならず、なかなかハードルが高くなっています。
もしまだ悩んでいるなら、一度は税理士等(税理士、商工会等、税務署の無料相談もあり)へ相談することをお勧めします。理由は、インボイス相談を受けていると、誤った情報を信じて不安になっている場合もあるなど、一度思い切って専門家に個別相談すればスッキリすると思われる事例が多いからです。また、消費税にはさまざまな選択や届出がありますが、その内容は複雑で、いわゆる落とし穴的なものもあるなど、自己判断は困難かつ高リスクだからです。



インボイス登録はしたけれど
もともと消費税の課税事業者であったなら、経理業務が煩雑にはなりますが、消費税の申告・納付は初めてではなく、消費税について何をどうすればよいのかサッパリわからない、などという事はないと思われます。
けれども今回インボイス登録するために課税事業者になった(これまでは免税事業者だった)という場合は、「インボイス登録はした。で、一体これから何をどうすればよいのか・・?」という不安があるのではないでしょうか。



インボイスで免税→課税なら2割特例
そのような“消費税は初めて”の事業者向けに、消費税の計算を簡単にできる特例が準備されています。
まず、インボイス登録したからには、自己の売上についてのインボイス(インボイス登録番号を記載するなどの要件を満たす請求書等)を発行し、控えを保存する義務があります。
そして原則は、経費(仕入や諸経費)についても、今度は受取ったインボイス(相手の登録番号等のある請求書等)をもとに必要な経理処理をし、保存しなければなりません。この経費側の事務処理に負担軽減策はありますが、それでも実務は複雑で、かなりの負担増が予想されます。
けれどもそのような経費側のインボイスは計算には使わない、つまり全く気にしなくてよい、というのが「2割特例」です。売上に係る消費税(仮受消費税)の2割を納付すればよいという特例です。
たとえば年間課税売上高(税率10%)が税抜800万円だったなら、800万円×10%=80万円が仮受消費税なので、80万円×2割=16万円が納付額となります。
2割特例はずっと使えるものではなく、経過措置(期限のある特例)です。個人事業者の場合、令和8年分の消費税申告までMax4回使える可能性があります。



ケースバイケースなので都度相談がベスト
当面、さまざまな経過措置で乗り切ったとして、その後はとうすればよいのでしょうか?
2割特例で言えば、令和9年分以降は消費税の「簡易課税」制度へ移行するなど、事務負担を少なくする方法はあります。けれども「簡易課税」にも注意すべき点がいくつかあります。事業者の状況によっては安易に「簡易課税」を選択すると不利になるケースもあり、場合によっては多大な損失を被ることもあります。
損失って何か?と言うと、たとえば、簡易課税は2割特例と同じような計算で消費税の納付額を出すため、多額な設備投資等をした年には“簡易課税でなければ消費税の還付が受けられたのに、還付どころか納付しなければならない”という事態になるなどです。
何かしらの税務判断をする前には、その都度、税理士等へ個別相談をするのがべストです。

記帳指導R5年分

2023.9月
個人事業者のための無料個別記帳指導開始
今回、昨年に引き続き、令和5年分確定申告に向けての個別記帳指導担当税理士となりました。
開業間もない個人事業者の事業所を訪問or当事務所にて、来年3月15日期限の確定申告に向けて、今後4回の個別対面指導を行う予定です。



記帳指導の具体的内容
記帳の指導って、具体的にはどんな事をしてくれるのかなーと思っている方へ。
それは、その方の事業形態や、現在までどのような管理をしているか(orしていないか)によります。
仮に「記帳の仕方が全くわからない」という場合は、まずいわゆる帳面の付け方から。「今まで手書きで処理していたが、会計ソフトを使ってみたい」なら会計ソフトの選び方から。「会計ソフトを使っているが、これで合っているか不安」であれば会計データのチェックから。
そして、どのような場合でも必ず、売上管理や証憑(見積書・請求書・領収書等)保管について現状を確認し、不足があればどのように改善すべきかアドバイス等を行います。
また、疑問や不安なことがあれば何でも対面で話していただき、個別具体的な質問等に対応します。
最終4回目には、決算書及び確定申告書を完成させて、税務署への提出まで共に行います。目標は電子申告ですが、状況により書面提出のこともあります。



税理士以外の相談先
この税理士による無料個別記帳指導は、事前申し込みが必要な制度なので、現在のタイミングで“記帳指導を受けてみたい”と思った場合、早くても来年(令和6年分)からになります。
では、無料もしくはあまり費用をかけないで、継続的に令和5年分の記帳指導が受けられる相談先としては、どこがあるのでしょうか?
税務署は無料ではありますが、ちょっと心理的に抵抗があるかもしれません。そのような場合は、青色申告会or商工会議所であれば、それほど費用をかけることなく継続して記帳指導を受けられるので、一度問い合わせてみることをお勧めします。
自分には関係ないかもしれないと思いながら、今もなお消費税のインボイスが気になっている方は多いのではないでしょうか?さらに令和6年1月1日からは電子帳簿保存法の電子取引データの保存義務が全ての事業者に課されるなど、自分だけでは不安な事がいくつか出てくると思われます。どこか相談先を見つけておくと、そのような心配事に対してもフォローが期待でき、より安心して事業に集中できるかもしれません。

マンション評価額の新ルール案

2023.8月
低すぎるマンション評価を補正する新算定ルール

マンションの実勢価格(実際に売買される値段)と相続税評価額が大きく乖離していることが問題視され、いわゆる“マンション節税”防止を目的としたマンション評価額の算定ルール見直し案が公表されています。
これまでマンション評価に使われていなかった「築年数」「総階数(総階数指数)」「所在階」「敷地持分狭小度(土地持分面積/部屋延床面積)」という4つの指数を取り入れた算式で評価乖離率(実勢価格と相続税評価額がどのくらいかけ離れているか)を求め、乖離率が1.67超であれば増額補正が必要と判定し、『現行の相続税評価額×評価乖離率(市場価格理論値)×0.6』で評価することとしています。
低すぎるマンションの相続税評価額(全国平均で時価の4割程度)を、時価の6割程度(一戸建の平均)まで引き上げようとするものです。



評価乖離率の算式の意味するところは・・
評価乖離率=築年数×△0.033+総階数指数×0.239+所在階×0.018+敷地持分狭小度×△1.195+3.220
評価乖離率を求める算式は、細かい小数とプラスマイナスが入り乱れ、非常に複雑に見えます。さて、この算式にはどんな意味があり、どのような場合に乖離率が高くなる(評価額が今より高くなり税額も上がる)のでしょうか?
・築年数・・・・マイナスを掛けるので、新しいマンションほど乖離率が高くなる
・総階数指数・・指数(総階数/33、Max1.0)なのでダイレクトではないが、高層マンション(タワマン等)であればあるほど乖離率が高くなる
・所在階・・・・居室が上の階(高層階)であるほど乖離率が高くなる
・敷地持分狭小度・・マイナスを掛けるので、部屋面積に対する土地持分面積が小さくなる高層マンション(タワマン等)であればあるほど乖離率が高くなる
新しいほど、タワマンであればあるほど、所在階が高いほど、評価乖離率が高くなりやすいと言えます。
ただしこの算式では、いわゆるビンテージマンション(古くて高層でないが高額取引される物件)は乖離率が低めに出て新ルールの対象外となるのでは、という指摘もあるようです。
また、今回の見直し案では一棟買いのマンションは対象外であり問題が残る、とも言われています。



評価が下がることもある
もともとはタワマン節税防止目的で導入されることとなったルールですが、タワマンに限定されるものではなく、一般的なマンションやワンルームマンションであっても、新ルールに当てはまれば増額補正となる可能性があります。
一方、条件によっては、新ルールのもとでは今より相続税評価額が下がる場合もありえます。それは評価乖離率が1.0未満となる場合です。具体的には、今の評価方法では実勢価格より相続税評価額の方が高くなってしまっているマンションです。その場合は、『現行の相続税評価額×評価乖離率(市場価格理論値)』が新しい評価額となります(減額補正)。
ゆったりと建築されている郊外型低層マンション等が該当すると思われます。



適用時期
現在(~令和5年8月20日まで)パブリックコメント実施中でその後に通達を定めることが予定されており、新ルールは令和6年1月1日以後に相続等or贈与により取得したマンションに適用するとされています。

半年に一度の源泉税の納付期限は7月10日 

2023.7月
源泉徴収とは
法人や個人事業主が給与・報酬などを支払うときには、所定の方法で給与等から本人(従業員など)の所得税を天引きし国へ納付することとなっています。
これがいわゆる「源泉徴収」と言われる制度で、給与などを支払う側に義務があります。



納付期限は原則翌月10日だが
会社等が天引きした所得税は原則、翌月10日までに税務署へ納付しなければなりません。
しかし小規模な会社等であれば、事前に届出をすることで年に12回の納付ではなく年2回(7月と翌年1月)の納付で済ませることができます。それが「源泉所得税の納期の特例」と言われるものです。
小規模とは何か?と言うと“常時使用する人数が10人未満”の場合のことです。よって、仮に働く人数が徐々に増えていき10人で安定したならば、それ以降は特例は使えず、毎月納付する必要があります。
年2回の特例が使える場合、今回は令和5年7月10日(月)が納付期限です。令和5年1月1日~6月30日に支給した給与等から源泉徴収した所得税を、7月10日までに納付する必要があります。



年調超過額の精算失念に注意
去年(令和4年分)の年末調整で、税務署に対して納め過ぎになっている税額(いわゆる年調超過額)が残っている場合は注意が必要です。
残っている場合は、通常は前回(令和4年7月~12月分)の納付書の摘要欄に「年調超過額×××円」などと記入し管理されているはずです。不明な場合は、会計データの預かり金勘定(科目)の令和5年1月納付後の残高がマイナスになっているなどから推測することもできます。
年調超過額が残っている場合は、今回の源泉徴収税額から納め過ぎの税額を引いた金額だけを納付します。それにより、去年の超過額を精算することができます。



源泉税額ゼロのときはどうする?
仮に、給与等の支払はあったが、全員、源泉税額がゼロだった場合、何もしなくてよいのでしょうか?
答えはNoです。この場合は、納付は不要(というかゼロなので納付すべき金額は無い)ですが、納付書へ給与等の額面や支給人数、源泉税額(ゼロ)等を記入し、それを税務署へ提出する必要があります。



納付が遅れてしまったら
忙しくて失念していたり、結構な金額ですぐには納付できないなどで、期限までに納付できなかったらどうなるのでしょうか?
源泉税納付遅れのペナルティは、不納付加算税と延滞税です。
不納付加算税は税額の10%です。ただし初めての滞納で期限から1ヶ月以内に納付したなどの場合にはかかりません。また、遅れても自主的に納付すれば5%に軽減されます。
延滞税は、遅れた期間に応じてかかる遅延利息のようなものです。
気付いたら早めに納付するのが、追加負担を最小限に抑えるベストな方法です。



国外居住親族に係る扶養控除の改正
あまり該当は無いかもしれませんが、令和5年分の所得税から、非居住者を扶養親族とするための要件が厳しくなりました(令和2年度改正)。
簡単に言うと、30才~69才の国外居住親族については、留学生・障害者などの場合しか扶養には入れないこととなりました。
詳細は多少複雑なので、該当者がいる場合(外国にいる親族を扶養に入れている従業員などがいる場合)は税理士等へ確認することをお勧めします。

クラウド会計ソフト | 新設法人が導入するなら

2023.6月
会計ソフトで自計化が理想
新しく会社を設立したとき、いずれ来る決算・税務申告は税理士に依頼するとして、毎月の経理処理はだれがどのように行うのか、検討する必要がでてきます。
会社の体制などにより無理な場合を除き、日々の取引を記録する作業、いわゆる「記帳」は自計化(自社で行うこと)が理想と思います。
理由は、記帳まで税理士に依頼してしまうとタイムリーに経営状態が把握できず、しかも費用もその分発生してしまうからです。



そもそもなぜ記帳するのか
経営状態は社長の頭の中に入ってるよ!記帳なんか、お金を払って外部へ任せればそれでいいじゃん、と思うでしょうか?
社長の感覚が常に正確であれば、そもそも記帳は無意味ということになってしまいますが、感覚的なものと現実の数字にはズレがある場合もあります。決算月になって初めて当期の利益を知り税額にビックリ!ということにならないためにも、感覚と実際の業績は一致しているかを定期的にチェックしておくべきと思います。



会計ソフトを選ぶとき
会計ソフトもいろいろあり、どれを選べばよいのか悩んでしまうかもしれません。顧問を依頼する税理士によっては、会社には選択の余地がないこともあります。が、もし自由に選べるとしたら、クラウド会計ソフトが有力候補と思います。理由は、
・インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでもパソコンで入力や閲覧等ができる
・使用開始にあたり、パソコンへのインストールは不要
・バージョンアップ不要で常に最新バージョンを使える。毎年の税制改正にも対応
・パソコンが故障してもデータはクラウドに自動バックアップで安心
などです。



新設法人向け今だけ情報
今回、新設法人での会計ソフト導入を検討する機会があり知った情報ですが、今なら「弥生会計オンライン」という法人向けクラウド会計ソフトの“起業家応援キャンペーン”なるものが行われています。ただし申込期限は今月28日(令和5年6月28日(水))です。
導入前相談を利用して詳細を確認したところ、内容にも問題なく、料金についてもメリット大と思われました。
「ちょっと興味ある。でも自力で導入前相談と言っても、経理初心者でハードルが高い・・・」という方は、税理士等に相談してみるとよいでしょう。

社宅家賃の適正額

2023.5月
社宅の提供はWinWinの制度
会社が役員や従業員に対して提供する住宅、社宅。社宅制度は、会社にとっても役員や従業員にとってもメリットのあるWinWinの制度になりえます。
社宅の提供はいわゆる現物給与ですが、定められた計算式等による適正家賃を徴収していれば非課税とされます。
自社所有物件でも借上社宅でも、活用できる可能性があります。



社宅のメリット
[入居者]
・相場より格安(10%~50%程度)の家賃負担で給与課税無し
・『住宅手当』としてもらうと社会保険料・所得税・住民税の負担が増えるが、社宅という現物給与であれば社会保険料・所得税・住民税には原則影響しない。
[会社]
・社会保険料負担額の増加は原則無し
・従業員にとって家賃負担の軽減となりモチベーションアップにつながる。人材流出抑制効果も期待できる。
・自社所有物件であれば、所有に係る費用(各種税金、減価償却費、保険料、修繕費、借入金利息等)が損金になる。



デメリット
[会社]事務作業が煩雑
・社宅規程作成(入居者条件、入居基準(役職や勤務年数の基準等)、家賃設定(自己負担割合)等を規定)・保管
・賃貸借契約書(会社と入居者間)の作成・保管
・給与計算で適正家賃を毎月天引き
・適正家賃は毎年見直し
・希望者が多い場合、不公平感が生じないよう配慮が必要



役員社宅
従業員社宅の適正家賃計算式は1つだけですが、役員社宅の場合は、建物の法定耐用年数や総床面積により3つの区分があり、状況によっては社宅の活用に制限があります(総床面積が一定ライン(99㎡)を超えると“小規模社宅”とは認められなくなり、適正家賃額が一気に高くなる等)。
けれども近年の新築マンションは100㎡以下が主流です。新築のSRC造マンションであっても99㎡以下の物件であれば小規模社宅と判定されるため、現実的にはかなり広い範囲の物件が当てはまり、自己負担賃料が最小限で済むというメリットを享受できる可能性もあります。



適正家賃スルーのリスク
従業員の場合、家賃の徴収漏れは源泉徴収漏れに直結し、遡って課税されると事務負担が重くなります。
さらに役員の場合は、源泉税の問題だけでなく、徴収不足額を役員賞与認定されると法人では損金不算入となり、個人と法人のダブル課税となるリスクがあります。
借上社宅の場合は市等で該当物件の固定資産課税台帳を入手し、税務リスクのない適正家賃を毎年計算することが大切です。



実際の計算はどうするのか
国税庁HPタックスアンサー等に要件や計算式が載っていますが、ちょっと難しい・・と思ったら、以下の判定フローチャート、計算シートをご利用下さい。
計算シートはPC(Windows)へダウンロードしてから、土地建物の固定資産課税台帳等を見ながら入力して下さい。
(従業員用)
・社宅家賃(従業員)計算シート
(役員用)
・役員社宅判定フローチャート
・役員社宅家賃計算シート

令和5年度固定資産税の縦覧・閲覧

2023.4月
令和5年4月3日(月)から新年度の閲覧開始
市民ガイドなどで広報もされていますが、松山市役所で今月3日から令和5年度固定資産課税台帳の閲覧及び縦覧ができるようになります。



閲覧の目的
その年1月1日の土地・家屋等の所有者に課される固定資産税。毎年の税額は、市などが決定した価格に税率(標準1.4%)を掛けて算出されます。(小規模(200㎡以下)住宅用地や新築住宅等については軽減あり)
閲覧とは、固定資産税の所有者等が、固定資産台帳で自分の土地・家屋の価格などを確認できる制度です。閲覧は、開始後ずっと可能です。1ヶ月間だけなどの期間制限はありません。



縦覧とは何か
縦覧とは、所有者(納税者)が、自分だけ高い税金を払っていないかを調べることができる制度です。
同じ市町村の他の土地・家屋の固定資産課税台帳の抜粋である縦覧帳簿を、一定期間のみ見る事ができます。今回、松山市であれば縦覧期間は令和5年5月1日(月)までとされています。



固定資産税評価証明書の使い方
所有者等であれば、閲覧とともにその年度の固定資産評価証明書を取得することもできます。何に使うのか?と言うと、相続税や贈与税の申告で土地・建物の評価に使用するなどし、申告時の添付資料にもなります。
また現在は、賃借人(借家人など)であっても、閲覧や証明書の取得が可能になっています。その使いみちとしては、借上社宅の家賃が適正かのチェックが考えられます。
借りた住宅の固定資産税納税通知書は送られてこないため、何もしなければ課税明細書を見ることはできませんが、閲覧や証明書取得により固定資産税の課税標準額を知る事ができ、税務リスクのない適正家賃を計算することができます。

パートタイマーの年末調整

2023.3月
パートは年末調整しない?
先月、市役所等での申告会を担当しました。毎年この時期に、市の申告つまり住民税の申告及び所得税の還付申告を主な対象として受付が行われます。
その際に今回、複数の方から「給与所得のみで1年間同じ一つの会社に勤めているが、会社がパートは年末調整しないと言ったので還付申告するために来た」と聞きました。
さて、その取扱いは正しいのでしょうか?


パートでもバイトでも対象者は年末調整が原則
給与計算では、正社員かパートかバイトかなどには関係なく、本人から提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に基づき、毎月の給与から適当な源泉税額を天引きして本人へ給与支給し、源泉税は都度税務署へ納付しているはずです。源泉税はあくまでも仮引きで概算です。
そして年末に従業員1人1人について一定の範囲内での正確な再計算を行い、会社との間で1年間の所得税の精算を済ませる手続きが年末調整です。
よって、特に年末調整できない事情(前職の源泉徴収票の提出がない、扶養控除等申告書の提出がないなど)がある場合を除き、パートであることを理由に、天引きだけして年末調整しないことには問題があると思われます。


扶養控除等申告書についての説明もポイント
今回の相談者の場合、本人の状況(障害者・ひとり親・学生など)を扶養控除等申告書に正しく記入していれば、そもそも毎月の源泉徴収税額は発生せず、年末調整や確定申告の問題も起こらないというパターンでした。
扶養控除等申告書の書き方は、一般の従業員にとっては難しいと思われます。プライベートな事情を本人が自分の判断で記入しないならそれは自由ですが、それ以前に記入方法がわからないから記入していないだけ、というのが現状のようです。記入すれば源泉徴収されなくなるor源泉徴収税額が減ると知れば、正しく記入する人も多くなるかもしれません。また、それにより会社の担当者の事務負担も軽減されます。
一言アドバイスをすることにより、お互いにメリットを享受でき、会社への信頼度も増すのではないでしょうか。少しだけ煩雑な業務かもしれませんが、ぜひご検討ください。

消費税インボイス登録はするべきか?悩んでいる個人事業者の方へ

2023.2月
インボイス登録は義務ではない

令和5年10月1日からインボイス制度が始まります。これまで消費税の免税事業者だった人も、インボイス登録するorしないかの検討が必要です。
ただし登録は義務ではなく任意です。事業実態によっては登録しなくても自分に不利にはならず、かつ顧客・取引先等にも迷惑をかける心配もない場合もあります。


まずは自分の顧客をチェック
では、どのように検討すればよいのでしょうか?
まずは顧客(売上相手先)が一般消費者(会社や個人事業者等でない人)であれば、相手はインボイスを必要としないため、あなたが登録する必要はありません。つまりこれまでのまま免税事業者でいても、インボイスについて誰にも迷惑はかかりません。
売上相手先が会社等であれば、10月以降の取引についてインボイスを求められる場面が想定されます。よってこの場合は、会社等へまずは尋ねてみることをお勧めします。会社等であっても、インボイスを必要としない場合もあるからです。


申請期限は令和5年3月末から9月末まで延長
令和5年10月1日から、つまり制度開始と同時にインボイス登録事業者になるためのインボイス登録申請期限は延長され、開始直前の令和5年9月30日までとされました。しかし実際には、直前の9月に申請していたのでは取引に支障があると思われます。
理由は、インボイス制度では売上請求書等(いわゆるインボイス)へ登録番号を記載しなければなりませんが、申請してから登録完了し登録番号を受取るまでにはタイムラグがあり、間に合わなくなる恐れがあるからです。
検討の結果、登録するのであれば、早めに登録申請しておくのがよいでしょう。


インボイス登録したらどうなるか
まず、これまで免税事業者で所得税の申告だけをしていた人も、今後(令和5年分から)は消費税の申告もしなければなりません。インボイス登録すると、免税事業者でいることはできなくなるためです。
消費税の申告をするにあたり、消費税の計算方法は、原則の「一般課税」と、要件を満たせば選択により適用できる「簡易課税」の2つがあります。
手間だけを考えると簡易課税の方が楽ですが、簡易課税は場合によっては大幅に損をしてしまうかもしれず、年数の縛り(2年はやめられない)など注意点も多々あり、選択するなら事前のシミュレーションが必須です。この選択は今回は、これまで免税だった人なら令和5年12月31日までに届出書を出せば令和5年分から適用できます。さらに簡易課税によらなくても税負担がしばらくは軽減される経過措置も導入予定です。
あわてることなく、ある程度時間をかけてじっくり検討するのがよいでしょう。

会社設立は合同会社か株式会社か

2023.1月
合同会社の設立が増えている

会社法により創設された新しい会社類型である“合同会社”は、ここ数年設立件数が急増し、2021年「全国新設法人動向」調査(東京商工リサーチ2022.5)によれば、新設法人の4社に1社を占めるまでになっています。



合同会社と株式会社は何が違う?
両者とも法人格をもち、債権者との関係は有限責任制であることは共通です。税法上の取扱いも、法人税法の適用を受けることは同じであり、役員給与に係る税務も、細かい部分では違いはありますが共通の扱いが多くなっています。また法人であるため、社会保険は強制加入となることも同様です。
では、相違点は何なのでしょうか?



〈主な相違点〉

 

合同会社

株式会社

設立費用

10万円程度

30万円程度

業務執行者

社員(出資者)に限られる

株主(出資者)でなくてもよい

決算公告義務

なし

あり

重要事項決定

原則全員一致

多数決

配当額の基準

貢献度などによることも
可だが

経済合理性ないと
課税リスク有

出資割合

信頼度の
イメージ

低~中


法人を設立する時どちらを選ぶべきか

法人を設立するということは前提として、個人事業でかなり利益が出てきたor当初からほぼ確実にかなりの利益が見込めるor規制等のため法人でしか営業できないなどの状況があると思われます。
そのような場合に、どちらかを選ぶにあたりどのように考えればよいのでしょうか?



①外部から要請があるなら株式会社
株式会社でなければ免許を取得できない、主要な取引先から株式会社であることを要求されるなどの制約があるなら、株式会社にせざるをえないかもしれません。

②資金が不安な場合は株式会社
経営手腕はあるが資金力に不安があり、他者からの出資を募りたいor銀行借入したいという場合は、株式会社の方が安全かもしれません。(合同会社では出資者しか業務執行者になれず、また銀行借入の場面では単なるイメージであっても不利になるかもしれないため。)

③法人形態であればOKなら合同会社
資金手当ての必要はなく、自分(たち)の資金と手腕で事業を継続して行くのであれば、合同会社にすることでコストと手間を削減できる可能性があります。



実際にはケースバイケースなので事前相談検討を
以上はあくまでも小規模事業の法人成りを想定した大まかな考え方であり、実際には個々に事情が異なりケースバイケースです。
よって設立に際しては事前に複数の専門家(税理士・司法書士など)に相談することをお勧めします。

年末調整のツボ

2022.12月
年末調整で難しく誤りやすいポイント

国税庁の年調ソフトやマイナポータル経由、クラウドなどで年末調整をスマートに完了できればよいのですが、まだなかなかそうはいかないのではないでしょうか。
経理担当者がチェックするとき、ツボがわかっていれば少しだけ業務が楽になるかもしれません。



配偶者や親族の収入と所得
扶養に該当するのかしないのか、配偶者や親族(子や親など)の今年の稼ぎについて記入しなければならず、従業員にとってデリケートで面倒な作業ではあります。しかし内容については親族間で確認してもらうしかありません。
会社として出来ることは、明らかに収入と所得を誤っていないかや、前年と全く同額の記入がされているが正しいかなど、気づいた点があれば再確認するくらいでしょうか。
扶養が誤っていると数年後に税務署からお尋ねなるものが会社に届き、過去3年分の見直しを求められたりします。その場合の会社の負担は大きいので「テキトーに記入していると税務署にはわかるので後で税金を取られる」と周知しておくと一定の効果はあるかもしれません。



16才未満の子や高齢の親などの障害者控除
16才未満の子は控除対象扶養親族ではないので、何となく障害者控除もできないと思い込んでいる場合があります。しかし療育手帳などがあれば該当し適用できるので、その旨を伝えてあげるとよいでしょう。
また、高齢者は障害者手帳がないと障害者控除は受けられないと思い込んでいる場合があります。そうではなく、軽い介護度であっても申請して市の認定書をもらえば障害者控除を適用できます。申請は電話でできる場合もあるので案内してあげるとよいでしょう。



保険料の支払者は誰か
国民健康保険や国民年金、生命保険料などは、支払った人からだけ控除することができます。よって子の国民年金を自分が代わりに支払ったのであれば控除できます。
しかしたとえば夫の支払った生命保険料がいろいろ多額にあって控除証明書が余っていたとしても、支払者ではない妻がそれを使うことはできません。使えないかも・・と思っていながら記入していたりする人もいます。
サラっと確認して納得してもらうのがお互いストレスが少なくてよいのではと思います。

源泉徴収漏れのペナルティ

2022.11月
報酬等の源泉徴収漏れは支払者にペナルティ
会社等が、給与や報酬料金(講演料、個人士業他)など一定の源泉徴収対象所得を支払う場合には、支払側に源泉徴収義務があります。つまり、全額を支払ってしまってはならず、所定の税額を天引きし、原則翌月10日までに国に納付しなければなりません。
では納付しなかったら、どんなペナルティがあるのでしょうか?



ペナルティは延滞税と加算税
ペナルティは、延滞税と加算税です。
延滞税は、納付が遅れた日数に応じて計算される、利息のようなものです。
加算税は、事情により課税割合や名称が変わります。



ペナルティの金額はどのくらいか
・自分で気づいて納付したら・・
たとえば、令和4年1月10日が納期限の源泉税200万円の納付を失念したまま時が経過し、6ヶ月後の7月10日に気付いて納付したとします。
それだけで済めばよいのですが、ペナルティがあります。この場合、

①不納付加算税:200万円×5%=10万円と
②延滞税:200万円×2.4%×59日(1/11~3/10)/365日+200万円×8.7%×122日(3/11~7/10)/365日=65,900円の
合計(①+②)=165,900円が追徴されます。

税務調査で指摘されたら・・
税務調査が絡むと、不納付加算税の割合は5%では済まず、10%(200万円×10%=20万円・・①´)となりペナルティは①´+②=265,900円となります。

仮装隠蔽などの場合は・・
また万が一不正事実に係るものがある場合には、その部分には不納付加算税ではなく重加算税35%(Max200万円×35%=70万円・・①´´)がかかり、ペナルティは最大①´´+②=765,900円となります。



速やかに対応がベスト
理由はさまざまかもしれませんが、納付漏れになっている場合は、調査の通知を受ける前に速やかに納付することが、一番負担の少ない選択と言えるでしょう。



非居住者には要注意
また、納付漏れ以前の問題として、そもそも源泉徴収が必要か否かの判断が難しいことも多く、注意が必要です。
誤りやすい事例として、給与・報酬の支払先や不動産賃貸契約等の相手として非居住者が登場する場合が挙げられます。従前と異なる支払パターンが出てきたときは独断せず、支払前に税理士へ相談するとよいでしょう。

記帳指導

2022.10月
税理士の無料個別訪問記帳指導
毎年、主に開業間もない個人事業者を対象に、9月~翌年2月頃まで、税理士による無料個別訪問記帳指導が行われています。
今回、担当になり、先月から数件の事業所を訪問しています。確定申告に向けて、それぞれの方の事業内容に応じた、無理のない最適な会計処理を一緒に考え、進めているところです。
税務判断はなかなか難しい
その際に質問されるなどして改めて思うことは、今、情報は巷に溢れているけれども、その真偽の見極めや、正しいとしても自分のケースはどうなのかの判断は、簡単ではないということです。
そのために法人等には顧問税理士がおり、開業時にはこの記帳指導などの税務支援制度があり、確定申告時期には税務署で申告相談があったりします。
誰に相談するか迷ったら
「開業したのだが、セミナーへ行っただけ。どこかもう少し相談できるところはないか・・」と悩んでいる方、相談先の選択肢はいろいろあります。無料の場もあります。
複数の機関(税理士会、税理士、青色申告会、商工会、税務署など)へ問い合わせしてみることをお勧めします。その対応で「合いそうだな」と思うところへ行ってみて、不安を解消してはいかがでしょうか。
記帳指導はお勧め
そして機会があれば、来年からにはなりますが、この“記帳指導”を利用してみるのもよいと思います。
税理士があなたの味方として申告まで伴走する制度です。

愛媛県松山市の税理士・社会保険労務士です。
鹿島徹子税理士・社会保険労務士事務所
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